原油価格の大幅下落で、ガソリン価格などが続落する事態になっている。このまま日本経済が潤い続ける、と考えるのは早計なようだが...。
米国では、原油価格の国際指標となる米国産標準油種(WTI)が2015年1月7日に一時、1バレル46ドル台と約5年8か月ぶりの安値水準をつけた。WTIは2014年6月に107ドル台まで上昇したが、この半年間で半値以下に値下がりしたことになる。
ガソリン安で物流活発化にも期待
原油安によって、ガソリン価格も下落している。経済産業省・資源エネルギー庁によると、2015年1月5日時点のレギュラーガソリンの1リットルあたりの価格は、145.2円。前週(14年12月22日)と比べると、3.9円もの下落。これで24週連続の値下がりだ。
軽油も前週から3.6円値下がりして125.7円。灯油も18リットルあたり61.8円安の1650円に下落した。半年前(14年7月)のピーク時と比べると、いずれも約15%もの値下がり。寒い冬も、灯油代を気にせずに過ごすことができそうだ。
おそらく最近の原油安に、一番ホッとしているのはトラック運転手かもしれない。なにしろ、アベノミクスによる円安によって、「利益が確保できない」などと悲鳴を上げていたからだ。全日本トラック協会などが13年5月に自民党本部で、約800人が参加する決起大会を開いて燃料価格高騰への対策を求めたのは記憶に新しい。
原油安は、14年4月の消費増税に伴う負担や、円安による輸入コストの上昇をある程度相殺する効果があり、企業の業績や家計にはプラスに働きそうだ。
ガソリン価格のほか、航空の燃油サーチャージなどが下落し、電気やガスなどの光熱費も値下がりする見通し。物流が活発になり、身のまわりの商品やサービスも値下がりが広がっていく効果が期待される。
原油安について、甘利明経済再生担当相は1月9日の閣議後の会見で、「原油価格が1バレル約100ドルだったピーク時から3割下がると4兆円程度、国内経済にプラス。現在は5割以上下がっているので7兆円ぐらいのプラスになる」との、内閣府の試算を明らかにした。
原油安、金融市場で「波乱」起こす恐れも
とはいえ、急ピッチの原油安は、産油国の経済不安を引き起こして欧州に波及し、世界経済を悪化させるリスクも抱えている。最近の株安は、こうした懸念を反映したものとされる。
甘利明経済再生担当相も、「(原油安は)日本経済にはプラスだが、産油国の運営に差し障るほど下がれば深刻な問題」とも指摘している。
また、米国のシェールオイル増産のペースが鈍り始めたことも不安材料の1つとされている。原油価格の下落で、事業者が開発コストの回収に不安を持ちはじめていて、相次いで投資計画を縮小したり延期したりもしている。
第一生命経済研究所経済調査部のエコノミスト、藤代宏一氏は2015年1月7日に発表したマーケットリポートで、「たしかに原油価格の下落が他のコモディティ価格の下落に波及し、それが資源国(企業)の苦境につながることで世界経済の成長を阻害するリスクはあります。また、たとえば資源関連ファンドの破たんなど、資源関連投資の損失に絡んだ話題が金融市場で何らかの波乱を巻き起こす可能性も否定できません」としている。
そのうえで、上向く可能性にも言及しており、「たとえば米国では好調な新車販売台数がすでに原油安のプラス効果として発揮していますし、日本でも、原料コスト減による企業業績の上方修正など、最終的には早晩プラスの影響を確認できるはずです」とみている。