韓国の民間団体が編纂した「親日人名辞典」がある。日本の統治時代に対日協力した韓国人の名簿で、2009年に出版された。この場合「親日」は、反民族の否定的な意味合いで使われ、批判の対象となるのは間違いない。
名簿の中には元大統領の朴正煕氏も含まれる。朴槿恵大統領の実父だ。「親日認定」されたはずが、韓国における評価は今も決して悪くないようだ。
ソウル市内のすべての中・高校に配布
在日本大韓民国民団の「民団新聞」2009年11月25日付記事によると、韓国の大学が調査会社に依頼して実施した「韓国の発展に最も貢献した大統領」のランキングで、1500人の回答者のうち朴正煕氏を選んだ人が75.8%に上り、2位の金大中氏(12.9%)以下を大きく引き離したという。ややデータが古いが、人気の高さは歴代大統領で群を抜いていると言えよう。
その一方で、「親日人名辞典」にその名が記されている。旧満州の軍官学校に入学した後、陸軍士官学校に編入、卒業。「満州国軍」に属して日本側に立って戦争に参加した経歴を持つ。軍官学校入学に際しては「血書」まで書いたとされる。2014年12月19日付の韓国・ハンギョレ新聞日本語電子版によると、ソウル市議会は人名辞典を市内すべての中・高校に配布するための予算案を通過させた。市会議員のひとりは、「教師が歴史授業をする際に親日派について正しく知ったうえで教え、民族正当性を正す趣旨」とコメントしている。
韓国の「対日協力者」に対する風当たりは強い。盧武鉉政権下の2004~05年にかけて、「過去の清算」として「日帝強占下親日反民族行為真相究明に関する特別法」「親日反民族行為者財産の国家帰属に関する特別法」が制定された。戦時中に日本に協力した人物を調査し、本人やその子孫の財産を没収することを認めたのだ。実際に「親日」と断定された人物の子孫が、この法律が違憲ではないかと訴訟を提起したが、韓国の裁判所は2011年に訴えを退け合憲判決を下した。
こうした風潮を考えれば、朴氏が現代社会で糾弾されていても不思議はない。だが実際は、その評価は単純ではなさそうだ。例えば2009年11月18日の中央日報日本語電子版のコラムは、当時発刊されたばかりの「親日人名辞典」、特に朴氏の記載について取り上げている。だが、対日協力に対する批判一辺倒ではない。