「替え歌」は違法なのか? 「会いたい」の沢田知可子と作詞家が裁判沙汰 

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   90年代のヒット曲「会いたい」の歌詞をめぐり、作詞家の沢ちひろさんから著作者人格権を侵害したと提訴され、慰謝料を請求された歌手の沢田知可子さんが、2014年12月8日、ブログに「訴状が届いていないので正確なお答えが出来ませんが、報道を観て大変ショックを受けております」と書いた。

   沢さんが提訴に踏みきったきっかけは、沢田さんがバラエティー番組で「会いたい」を「安定したい」と替え歌にしたことだという。はたして替え歌に違法性はあるのだろうか。

「歌手は一銭ももらえない 泣きたい」と替え歌に

13年9月のバラエティー番組で替え歌を披露
13年9月のバラエティー番組で替え歌を披露

   1990年に発売された「会いたい」は130万枚を売り上げた沢田さんの代表曲。87週にわたってオリコンシングルランキングで100位以内に入るロングセラーとなり、91年の日本有線放送大賞グランプリを獲得、沢田さんにとっては紅白歌合戦の初出場につながった。

   この曲をめぐって2人の関係がこじれたのは、13年9月に放送されたバラエティー番組で沢田さんが替え歌を披露したことが発端だ。12月8日放送の「モーニングバード!」(テレビ朝日系)によると、替え歌の歌詞は

「曲が売れた収入で 目黒のマンション手に入れ すぐにバブルがはじけた(もとの歌詞:ビルが見える教室で ふたりは机並べて 同じ月日を過ごした)」
「カラオケみんなが歌って いっぱいお金入るって全くウソじゃない 歌手は一銭ももらえない 泣きたい(今年も海へ行くって いっぱい映画も観るって約束したじゃない あなた約束したじゃない 会いたい)」

などと、ヒット曲を続けて出さないと安定した生活ができない、という内容だ。

   週刊現代(12月20日号)によると、沢さんは「あの詞は私が幼い頃に死に別れた母との思い出をベースにしたもの」だと語る。「モーニングバード!」でも「沢田さんにとって大事な歌なら替え歌なんて歌えない」「もう『会いたい』を歌わないで欲しい」とし、替え歌によって精神的苦痛を受けたとして慰謝料200万円を請求している。

   また、沢田さんが14年7月に発売したアルバムの中には、ボーカルグループとコラボし、曲の冒頭に英語のコーラスが入った「会いたい with INSPi」が収録されている。これに対しても沢さんは、タイトルと歌詞を無断で一部改変したとして、11月末に沢田さんの所属事務所代表で夫の小野澤篤さんとCDの販売元を著作者人格権侵害で提訴したという。

形式的に解釈すれば違法行為か

   替え歌や歌詞の一部を変えることは違法行為にあたるのだろうか。著作権問題に詳しい岡邦俊弁護士は「著作者の意に反して著作物を変更する、著作者人格権の同一性保持権を侵害する行為にあたる可能性があります」と指摘する。森進一さんが、作詞家の川内康範さんに断りなく歌詞を加えた「おふくろさん騒動」が同一のケースだ。

   一方で、クラシック音楽で自由に即興の演奏をする「カデンツァ」を引き合いに、「今回のケースは形式的に解釈すれば違法行為に当たるかもしれません。しかし、歌詞の一言一句を変えてはいけないと杓子定規にとらえるのか、歌手にアレンジする自由を認めるのか、という文化的な側面からの見方もできます」という。替え歌騒動のポイントを「改変が歌詞の文化的、経済的な価値を失墜させる行為だったのかが問われることになります」とした。

   また、音楽の著作権を管理するJASRACは、「著作者人格権は著作者が持つ権利のため、関与できない」とし、当事者間で解決する事案だとしている。

   沢田さんは前述のブログで「これからも歌手として一心不乱に心を込めて歌ってゆく所存です」と書いているが、今後「会いたい」を歌うかどうかについては触れていない。

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