「TOYOBO」がとくに人気
また種類の豊富さも日本製の魅力だ。日本メーカーの中でも特に人気が高いのが東洋紡で、同社製の生地は高級品市場で7割のシェアを握る。その東洋紡の場合、生地の厚みや肌触りのほか、「白」でも純白やベージュがかった色などバリエーションが豊富だ。東洋紡がアラブ向けに常に輸出している生地だけでも100種類を超えるという。また、現地のニーズをとらえた中東の問屋が細かい注文を出しても、すぐに応じられるという。
この結果、日本製の生地はアジアなど他国製の布地に比べ、1.5倍~2倍程度の高値にもかかわらず、人気が衰えることはなく、今や「TOYOBO」を真似た「TOBOYO」などの偽物も出回る始末だ。しかし「触ればすぐ本物か偽物かわかる」ほどの品質の違いがあるという。
日本メーカーは、国内繊維産業がピークを越えた1970年代ごろから、新たな市場開拓を目指し、徐々に中東向け輸出を始めた。当初は文化の違いから困難もあったというが、他国メーカーの中には入金後に注文とは違う生地を送ってトラブルになるケースも少なくない中、日本企業は高い技術力を背景に、「ルールに従って、正直に商売をしてきたことが現地の問屋の信頼につながった」(業界関係者)とされ、現在の盛況につながっているようだ。