長崎県対馬市でまたしても起きた韓国人による仏像窃盗事件に日本中が激怒する中、ニュースキャスターの古舘伊知郎さんは、なぜかカメラに向かって仏の教えを説いた。
「仏教ってのはそもそも生きる上で物質世界にとらわれている、その執着をダメだよっていう教えでもあるんですけどね」
仏像が盗まれたと大騒ぎする日本人をたしなめるような発言に、違和感を覚えた視聴者は少なくないようだ。
「こだわることを忘れなさい」
2014年11月24日、梅林寺から市の有形文化財指定の仏像を盗んだとして建造物侵入および窃盗の疑いで韓国人の男が対馬南署に逮捕された。また、同寺が保管している大般若経350点を持っていたことから、同署は余罪を追及している。「日本の仏像を売れば金になる」という趣旨の供述をしたと報じられた。しかも、対馬市では12年にも仏像の窃盗事件があったばかりで、「許しがたい」という声は強まっている。
事件は25日の「報道ステーション」(テレビ朝日系)でも取り上げられた。しかし古舘さんはニュースの冒頭、「これも腹が立つ訳ですけれども、別の面から考えますと、仏教ってのは、そもそも生きる上で物質世界にとらわれている、その執着をダメだよっていう教えでもあるんですけどね」と切り出したのだ。
事件を伝えるVTRでは寺の住職の「身がはがされる気持ち。奪われたことには腹立たしさがある」というコメントが紹介された。これを受け、スタジオの古館さんは「そりゃ対馬の方々、お寺さんも本当に(怒っている)...というのは分かるんです」と語る。そして、
「その大般若経のことは分かりませんけど、般若心経の有名なお経で言うと、『とらわれることから離れなさい』と『こだわることを忘れなさい』と。こだわらない心、とらわれない心、そういうことを教えてくれるんですよね」
と淡々と述べた。その語り口や表情は、社会問題に鋭く切り込む普段の様子とは違って、どこか穏やかなものだった。
「お釈迦様にでもなったつもり」と批判
また、古舘さんは事件について、「仏像が盗まれたというニュースばかり」と指摘。「経典が盗まれたということは、あまり執着が薄いんですよ。一番肝心なことはそっちに書いているんですよね」という。続けて「物に執着する我々みたいなのが浮き彫りになるんです。皮肉にも」と語った。
満足げに持論を述べた古舘さんだったが、視聴者からの賛同はあまり得られなかったようだ。ツイッターなどには納得できないという声がすぐに広がった。
「仏像をくれてやれってこと?」「取ったもん勝ちの無罪か?」と、容疑者をかばっていると受け止めた人から批判を浴びた。「そもそも仏教では盗みを禁じてます」「仏教には不偸盗(ふちゅうとう)という戒律がありましてね」など、仏教の理解が浅いという指摘もあった。
実は古舘さんは、恒例のトークイベント「トーキングブルース」を1999年に京都・永観堂で開催したことがある。その時には「お経」にも挑戦するほどで、仏教には独自の見解があるのかもしれない。しかし、仏像窃盗に怒る視聴者からは「お釈迦様にでもなったつもりで視聴者に説教」と反発を招いてしまったようだ。