牛丼チェーンの「松屋」に、異変が起きている。
「松屋」を運営する松屋フーズは2014年7月、従来の牛めし(並盛290円)に代わる「プレミアム牛めし」を、380円(並盛)で発売。「吉野家」や「すき家」と一線を画す、高級路線のゆくえが注目されていた。ところがここにきて、再び安値に逆戻りする動きが出ている。
「380円は決して高くない」 社長は「超強気」だったのに
2014年7月17日、牛丼チェーン大手の松屋フーズは「プレミアム牛めし」を発表(7月22日の発売)。緑川源治社長が「(これまでの牛めしとは)まったく別物」と、自画自賛した。
4月の消費税率8%への引き上げで、かつては「デフレの象徴」ともいわれた牛丼も値上げ。吉野家で並盛280円が300円に、すき家は280円が291円に(当初は税込270円)、松屋は280円から290円(いずれも、税込価格)と、増税分程度の転嫁にとどめていた。
ところが一転、松屋は吉野家を大きく上回る、並盛380円の「プレミアム牛めし」を関東の1都6県を中心に、一部店舗で売り出した。
プレミアム牛めしと290円の牛めしは併売しないので、事実上の値上げともいえる。
従来はフローズン(冷凍保存した)牛肉を使用していたが、プレミアム牛めしではチルド(低温保存した)牛肉に切り替えたことで「これまでにないおいしさ」を実現。緑川社長も発表会では「究極の牛めし」と胸を張り、「380円は決して高くない」と自信をみせていた。
インターネットでも、
「たしかに、おいしい」
「牛肉の臭みやスジっぽさがない」
などと、評判は悪くなかった。
とはいえ、「これ(プレミアム牛めし)を導入することでお客が減るかもしれない」と、緑川社長自らがそう話すなど、ホンネでは「手さぐり」だったのかもしれない。
松屋に限らず、牛丼チェーン大手は人件費や牛肉などの材料費の高騰で店舗運営コストが上昇。収益が悪化している。松屋フーズの2014年9月中間連結決算は、営業利益が前年同期比3.8%減の6億1200万円、税引き後利益は85.4%減の2600万円と、ギリギリで黒字を確保するのがやっとだった。
10月の業績をみると、売上高は前年同月と比べて2.0%増、客単価も5.9%増えたが、客数は3.7%減と伸び悩んでいる。客数の減少はこれで5か月連続だ。
学生街などで「実験的にやっているもの」......
そうしたなか、松屋は「プレミアム牛めし」を一部の店舗で休止し、並盛290円の「牛めし」を「復活」させた。
インターネットでは、「11月20日10時より、プレミアム牛めしの販売を休止し、牛めし(並290円)の販売を再開致しました」との告知が貼られた店の写真が公開され、そのことを伝えている。
松屋フーズによると、プレミアム牛めしから従来の牛めしに戻した店舗は、高田馬場や池袋(一部店舗)といった学生街などにある店舗で、「実験的にやっているものです」という。プレミアム牛めしの発売後、売り上げや客足に響いている店舗などを対象に12か店で再開した。
ただ、プレミアム牛めしの販売打ち切りは「考えていません」。またプレミアム牛めしと従来の牛めしの併売も、「オペレーションの問題などもあるので、現状では考えていません」と言い切る。
インターネットには、
「プレミアム牛めし取りやめの店増えてるのか。確かにおいしくはなってるんだけど、100円アップするほどじゃなかった」
「一度も全国展開しないまま終わったのか... けっこう食いたかったんだが」
「従来価格に戻るなら... と松屋を敬遠していた層が戻ってくる可能性はありますね」
こうした残念がる声に混じり、
「俺たちの松屋が帰ってくるんだな...」
と、従来の牛めしの「復活」を歓迎する声は少なくない。
さらには、
「ファーストフードなのに100円も値上げしたら、そこ行かんわ」
「やっぱり客離れが起こったんでしょうな」
「安い牛丼をお求めのお客様は他に行っていただきたい、とか言ってたよな」
と、高級路線の失敗を指摘する声もある。