橋下市長、新聞の軽減税率で記者を問い詰める 読売は沈黙、日経しどろもどろ...

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   大阪市の橋下徹市長(維新の党共同代表)が2014年11月20日に開いた会見で、与党が衆院選向けの公約に盛り込むことを決めた「軽減税率」の是非について記者と応酬があった。橋下氏は軽減税率導入に反対の立場で、次々に記者に議論を吹っ掛けた。

   新聞業界は新聞への適用を求めていることもあって、新聞記者は「お願いしたい」と理解を求めたが、テレビ局の記者から出た言葉は「必要ない」。橋下氏は「いいじゃないですか!」と、すっかり「我が意を得たり」といった様子だった。

軽減税率は「僕の一番嫌いな不公平・不公正を生む要因になる」

橋下市長は軽減税率自体の導入に反対だ(2013年5月撮影)
橋下市長は軽減税率自体の導入に反対だ(2013年5月撮影)

   軽減税率は食品をはじめとする生活必需品の税率を低くして低所得層への負担を緩和することを目的としている。日本新聞協会は2013年1月に、

「『知識には課税せず』『新聞には最低の税率を適用すべし』という認識は、欧米諸国でほぼ共通しています」

などとして新聞に軽減税率適用を求める声明を出している。

   橋下氏は、軽減税率では、どの品目にどういった税率をかけるかについて「政治の色々な利権というものが出てくる」という理由で導入には反対で、低所得層に現金を給付する「給付付き税額控除」を導入すべきだとの立場だ。

   記者会見では、橋下氏は読売新聞記者の質問に答える形で、こういった軽減税率の反対理由を説明。その説明の中で読売新聞に矛先が向いた。

「特に新聞業界ですよ。なんですか、あれ。新聞業界だけ、自分のところだけ『軽減税率、軽減税率』って...。あんな情けないことをね、読売新聞が中心になって言うなんてのは、情けないですけどもね」
「軽減税率みたいなことをやってしまうと、新聞やらなんやら、特に読売新聞は政権と近いですから、何とかその主張を通すのかもわかりませんけど、こんなの既得権というか、僕の一番嫌いな不公平・不公正を生むね、要因になりますよ、軽減税率は」

「会社の立場で答えるとすると『お願いします』という感じ」

   次にターゲットになったのは日経新聞。日経新聞記者の質問は直間比率や税の公平性に関するものだったのだが、橋下氏は突然「新聞の軽減税率は賛成なんですか?」と切り返した。

   記者がしどろもどろになりながら、

「えーと、私は今、会社の立場でこちらにいるので、それで答えるとすると『お願いします』という感じだとは思いますが...」

と答えると、橋下氏は苦笑いしながら「情けない!」と切り捨てた。記者も、

「個人としてはいろいろな思いはあります。あのー、ただ、フランスなんかではですね、学生さんに対して新聞代を補助するとか、そういう仕組みとかもあるので......」

などと海外の例を出しながら説明を試みたが、橋下氏は「それはだから別に考えたらいい」とした上で、

「しかし今の日本の新聞って、そんな公正な中立な、客観的な報道で、ちゃんと住民の皆さんに伝えるべき情報が満載になっているものなんですかね? 僕はとてもじゃないですけど、そうは思いませんけどね?」

と皮肉った。

ABC記者「10%程度の消費税で軽減税率自体必要ない」

   テレビ局記者の反応は、新聞記者とは大きく違っていた。衆院選関係の質問をした毎日放送(MBS)の記者に対して、橋下氏が、

「(新聞と違って)テレビだから、どうなんですか?新聞の軽減税率は?これでまた、肩持つんですか。またみんな同じ、ギルドですよ、これ!」

とまくし立てると、記者は「まだなんとも言っていないんですけど...」。直後に会見場には笑いがもれた。

   新聞の重要性を感じているという記者に橋下氏が「でも軽減税率なんかやるべきなんですかね?」と問うと、記者は「個人的には、そうはあまり思わないですね」。橋下氏は、

   「ああ~、いいじゃないですか!そうなんですよ!」と嬉しそうに答えた。

   橋下氏は朝日放送(ABC)の記者にも、

「新聞の軽減税率はどうなんですか?」

と聞いた。この記者の答えも、

「私はフランスで3年間暮らしましたけれども......個人の考えですよ? 消費税20%くらいの税率の国で軽減税率があるのはわかりますけれども、10%程度の消費税で軽減税率自体は、必要ないと思っています」

   現時点での軽減税率導入そのものに否定的で、橋下氏が新聞への適用について、

「新聞だけ騒ぐのも、そりゃおかしいでしょ?」

と念押しすると、記者は「はい、そうですね」と断言。

   このABCの記者は普段は橋下氏にきわめて厳しい質問を投げかけるだけに、橋下氏は、

「あー、いいじゃないですか、いいじゃないですか!どうなんですか読売新聞さん!」

と大はしゃぎ。読売新聞記者は答えに窮して会見場に沈黙が続き、事務方が「ほか、いらっしゃいますか?」と割って入ると「場が和んだ」のか、会見場には再び笑いが広がった。

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