NHK経営委員で作家の百田尚樹氏が、民主党について「こいつら、日本人を殺したいのか!」なとどツイッターで憤っている。エボラ出血熱への対策強化を盛り込んだ感染症法改正案の審議を民主党が「ストップさせている」というのがその理由だ。
ただ、現時点では民主党が審議を直接的に拒否した事実はない。そのうえ、百田氏はこのツイートの冒頭に「【拡散希望】」とまで書いており、事実と異なる情報を広める結果になっている。
塩崎厚労相「一日も早い成立を願うばかり」
改正案では、エボラ出血熱をはじめとする感染症の感染が疑われる患者の血液などを都道府県知事の権限で強制的に採取できるようになるほか、感染症に関する情報収集体制を強化する。法案は10月14日に閣議決定され、臨時国会に提出された。エボラ出血熱の感染の世界的な広がりを背景に政府は成立を急ぎたい考えで、大臣2人が辞任した直後の10月21日の記者会見では、塩崎恭久厚労相が、
「私どもとしては速やかに審議していただいて、一日も早く法律を成立させてもらうということを願うばかりです」
と述べるほどだ。
そうした中で、ご立腹なのが百田氏だ。10月28日午前、ツイッターで、
「【拡散希望】世界がエボラを封じ込めようと必死で戦ってる中で、日本も感染症関連法案改正に取り組もうとしているが、民主党が審議をストップさせている!こいつら、日本人を殺したいのか!民主党、許さん!」
とぶち上げた。「【拡散希望】」したこともあって、このツイートは4500回以上リツイート(転送)されている。
臨時国会では、民主党をはじめとする野党がスキャンダルを追及する構えだ。例えば民主党の菊田真紀子衆院議員は10月28日の本会議で約30分のうち半分近くを、いわゆる「政治とカネ」の問題に割いた。さらに、衆院で審議入りした労働者派遣法改正案は民主党を筆頭に野党の大半が強く反対しており、審議は難航しそうだ。
与野党の対立が原因で感染症法改正案の審議が遅れる可能性はある。ただ、百田氏がこの点も踏まえて指摘したかどうかは不明だが、民主党が意識的に感染症法改正案の「審議をストップさせている」というのは事実とずれがある。
法案が審議入りしていないので民主党が「ストップ」させることはできない
改正案は参院の厚生労働委員会から審議を行うが、まだ委員会への付託すらされていない。そのため、始まっていない法案審議を民主党が「ストップ」させるのは不可能だ。
さらに、民主党がスキャンダルの追及を強めているという指摘を念頭に、海江田万里代表は10月27日の会見で、
「これまでも議論はしっかりしている。予算委員会を見てください」
などと反論。現時点では審議拒否という手段はとらないことを明らかにしている。
改正案は10月末にも参院で審議入りする見通しで、現時点では野党からも改正案に反対する声は出ていない。
もっとも、百田氏は民主党だけに矛先を向けている訳ではない。望月義夫環境相が10月28日未明に開いた会見について、百田氏は会見前の段階では、
「深夜にいったい何を?まさか、エボラではないよな。しょうもない記者会見であってほしい!!」
などとツイートしたが、会見が終わって自らの政治資金に関連する内容だと分かると、望月氏を激しく罵倒していた。
「望月環境大臣の記者会見は実にしょうもないもんやった!あんなもん、深夜に緊急にやるものか!ボケ!」