東京都杉並区は学校給食で「中国産食材の使用をしない」と発表した。
中国産食材のすべてが安全面に問題がある訳ではないが、消費者の不信感は根深く、特に子どもが食べる給食となると心配だ。都内のほかの区ではどういう対応を取るのだろうか。
6区が新たに検討、調査を進める
見直しのきっかけとなったのは週刊文春(2014年10月16日号)の特集記事「学校給食に中国食材!」だ。東京、神奈川の各自治体での中国産食材の使用状況を独自に調査し、その危険性を訴えたもので、多くの学校で使用されている実態が明らかになった。
記事を受け、杉並区は10月8日に「当面、代替可能な食材については、中国産の食材を使用しないこととします」と発表。全校に輸入食材の使用状況の調査を進めるとした。国産に切り替えて給食費が不足した場合は区から補てんするという。
そのほかの区では今後どういう対応を取るのか。J-CASTニュースの取材に対し、世田谷区や板橋区、足立区など6区が新たに検討、調査を進めると明らかにした。これらの区ではこれまで原則として国産食材を使用していたが、一部中国産の食材を使用していたと認める。もちろんさまざまな基準に照らし合わせて安全面の確認は行っていたが、あらためて使用状況を調査する方針だという。
緑豆春雨など国内で供給できない食材で中国産を使用していた大田区は、今後は国産だけで給食をまかなっている学校のノウハウを他校にも共有し、新たに食材使用のガイドラインを作成する予定だ。
保護者から問い合わせはあるが...担当者「正直苦しい」
ただ、中国産食材をいっさい使用しないというのは難しい。緑豆春雨やキクラゲなど中華料理風の献立に欠かせない食材や、99%以上を輸入品に頼るゴマなど、なかなか代替できない食材も多い。タケノコなど日本で収穫できる季節が限られているものも少なくない。
また、目黒区はサッカーW杯期間中に対戦国の料理を献立にするなど、給食を外国文化に触れ合う機会として大切にしている。そうした中、ザーサイなど手に入りにくいものは中国産に頼らざるを得ない部分もあるという。
国産食材へと切り替える際に懸念されるのが給食費の問題だ。ある区の担当者は「基本的には国産が中心で、海外産は安全性が確認できたものを使っている。しかし、すべてを国産にするとなると正直苦しい。家庭ごとの所得の問題もあるので」と頭を悩ませる。別の区の担当者も価格面で2倍以上の開きがある食材は使いづらいと明かした。
区によってばらつきはあるが、1か月あたりの給食費は小学校低学年で4000円、中学生で5000円ほどだ。1食当たり200円から300円前後で押さえるために苦心して献立を計画している。
もちろん中国産食材だからといって必ずしも危険だとは言えず、献立に使用する際は十分に安全性を確認している。ただ、家庭では気を使って国産食材を食べさせているのに、給食では中国産のものを食べているとなれば、保護者にとって不安は大きい。実際に学校や教育委員会に問い合わせはあったという。
台東区や墨田区など中国産食材を使用していない区もあるが、すべての地域で中国産食材不使用を実現するにはハードルがある。