東京電力福島第1原発2号機の護岸近くの地下水から、これまでで最も高い濃度の放射性セシウムが検出された。10月上旬に関東地方を直撃した台風18号の影響で地下水位が上昇、過去に漏れ出して残留し続ける汚染水と交じり、濃度が上昇したとみられる。
2号機と3号機それぞれのタービン建屋につながる海側トレンチ(ケーブル用の地下道)には、今も大量の高濃度汚染水がたまったままだ。
トリチウムも過去最高値、1年前にはベータ線出す物質検出
原発事故直後、トレンチには高濃度汚染水が流れ込んだ。2011年4月初旬には、2号機取水口付近のピットと呼ばれる施設から汚染水が海に流出。東電は止水のために高分子ポリマーや新聞紙、おがくずまで投入するほど対応に苦慮した。このピットとトレンチはつながっており、トレンチ内の水が漏れ出た可能性が指摘されている。
事故から3年7か月、トレンチの汚染水はいまだに滞留している。資源エネルギー庁原発事故収束対応室に聞くと、残留汚染水の総量は1万1000トンに及ぶという。これが、汚染水問題で重くのしかかっている。
不安要素のひとつが自然災害、特に台風だ。2014年10月6日、静岡県浜松市に上陸した後に東に進んだ台風18号は、原発に影響をもたらした。東電の10月14日の発表によると、前日の13日に2号機近くの観測用井戸から採取した地下水から、放射性セシウムが1リットル当たり25万1000ベクレル検出されたという。海側の観測用井戸では過去最高の濃度となった。
マンガンやコバルトといった他の物質の値も過去最大を記録。この日は採取されていないが、9日にはトリチウムが同じく過去最大の数字となっていた。
実は1年前にも似たような状況が見られた。2013年10月中旬、本州に接近した台風26号の影響だ。台風通過後、原発の海側の側溝から採取した水に、ベータ線という放射線を出す放射性物質が高い濃度で検出された。この時は、地中に染み込んでいた放射性物質が台風の大雨により側溝に流れ込んだと見られている。
トレンチと建屋の接続部分の凍結が進まない
このままでは、台風や大雨に襲われるたびに高濃度の汚染水による悪影響が続くことになる。トレンチの「たまり水」は除去に向けて対策が講じられているが、順調とはとても言えない。
東電では、建屋とトレンチの接続部分を凍結して止水したうえで、トレンチ内の汚染水を吸い上げ、トレンチそのものは埋めるというプランを進めている。トレンチに凍結管を入れ、氷やドライアイスを投入して管内を流れる水を凍らせてしまおうというのだ。だがこれまでのところ、経過は芳しくない。
10月3日に開かれた第27回特定原子力施設監視・評価検討会では、この止水工事の進行状況が議題に上った。凍結が不十分という現状から、止水性を確保するためにセメントなどの素材を使って接続部分を埋めるという。検討会に提出された工程表によると、止水工事は11月上旬までに完了させることになっている。その後、2号機のトレンチ内汚染水について放射性物質の処理設備に通した後に移送するというが、これは止水完了後の11月中旬~2015年1月いっぱいをめどに終わらせる予定を立てている。
10月に入って、列島は2週連続で台風に襲われた。台風18号に続く19号により、10月14日未明から原発周辺も風雨にさらされ、大量の雨水が建屋内に流入したという。14日以降の地下水観測調査の結果は現時点で発表されていないが、台風19号の影響が予想される。
台風の季節が終わっても、これからは秋の長雨や大雪など心配は尽きない。不測の事態で、1万トンを超える高濃度汚染水があふれ出せば一大事。一刻も早いトレンチからの除去が望まれる。