中国政府が、中国語や文化教育を広めるため世界各地で設置している「孔子学院」。日本でも、立命館大学や桜美林大学など数校の大学キャンパス内に開設されている。
最近になって米国では、孔子学院の閉鎖が相次いでいる。かねてから根強かった、中国当局の「スパイ機関」という疑念が強まっているようだ。
大学名はついているが中国政府が資金提供、講師派遣
孔子学院は2004年に韓国で初めて開校。日本では2005年設立の「立命館孔子学院」が最初だ。日中の大学が提携する形で、日本の大学内で運営されている。例えば立命館大は北京大と、桜美林大は同済大(上海)と、関西外語大は北京語言大とそれぞれ提携し、中国語や中国文化の教育が行われている。早稲田大学のように、研究事業を主目的とする孔子学院を開いた例もある。
2013年度時点で、世界120か国・地域で440校の孔子学院が運営されているが、ここに来て米国で閉鎖決定が相次いだ。口火を切ったのはシカゴ大学だ。2014年10月2日付の米ウォールストリートジャーナル日本語電子版によると、同大は9月29日、孔子学院との5年契約を更新しなかった。米国大学教授協会(AAUP)が6月、全米の大学に対して孔子学院の契約の継続を検討するよう申し入れていた。中国政府の意向を強く反映している運営体制が、大学における学問の自由を脅かすというのだ。
10月に入ると、今度はペンシルベニア州立大学も年内の提携打ち切りを明らかにした。ロイター通信によると同大学は、中国政府の中国語教育管轄部門であり孔子学院の母体である「漢弁」との方針の違いであると説明したそうだ。両大学とも契約を更新しない具体的な理由は明らかにしていないが、孔子学院が中国政府と密接につながり、語学や文化といった「ソフトパワー」による宣伝活動を進めていることに、教員たちが不満を持っていたという。
中国事情に詳しいジャーナリストの福島香織氏が、9月30日放送の「荒川強啓デイ・キャッチ!」(TBSラジオ)で孔子学院について詳しく解説した。米国では「スパイ機関」との批判は以前から出ていたようだ。
「立命館孔子学院」のように大学名が押し出されているが、大学側は施設を貸しているにとどまるという。実態は中国政府が資金を提供して全面的に支援し、独自の教材を使って中国から派遣された講師が教育する。そのため米国では「大学の中立性を損なう」との非難が起きた。大学の「仮面」をかぶっているが、中国の宣伝活動をしているに過ぎないという見方だ。