太平洋メジマグロ、漁獲半減で合意 全体では小売価格への影響少ない

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   すしのネタとして人気の太平洋クロマグロに関する新たな漁業規制が決まった。北太平洋海域のクロマグロの資源管理を話し合う「中西部太平洋マグロ類委員会(WCPFC)」の小委員会が2014年9月4日、福岡での会合で、重さ30キロ未満の未成魚の漁獲量を2002~2004年平均から半減することで合意した。

   年末の総会で正式決定の上、2015年から適用し、10年かけて成魚を約6割増やす計画。ただ、すでに日本の漁獲量は大きく減っており、国内の価格への影響は小さいとの見方が一般的だ。

低価格すしチェーンなどではメジを使用?

「マグロ大国」日本がリードした「漁獲半減」(画像はイメージ)
「マグロ大国」日本がリードした「漁獲半減」(画像はイメージ)

   クロマグロは大型のマグロ類で、「本マグロ」とも呼ばれる最高級の食用魚。30キロ未満の未成魚は「メジマグロ」「ヨコワマグロ」と呼ばれ、安いすしネタや刺し身として流通している。低価格すしチェーンなどでは、本マグロは使わず、メジなどを使っているところが多い。

   太平洋クロマグロの成魚の資源量は、1960年代に推定14万トンあったのが、1984年に約1.9万トンまで落ち込み、その後8万トンレベルまで回復したものの、再び下落に転じ、2012年は約2.6万トンと、最低水準に接近している。もちろん、乱獲が原因で、資源を増やすには未成魚を取らないようにする必要があるという国際的な議論が高まり、WCPFCは13年12月の年次総会で、2014年の未成魚の漁獲量を2002~2004年平均から15%以上削減することを決めた。

大消費国の日本が「漁獲半減」を提案

   ところが今年春、WCPFCが調査を委託した海洋学者らのグループが、10年以内に資源が回復する唯一の選択肢として「漁獲半減しかない」とのリポートを発表し、議論は仕切り直しに。日本人はマグロが好きで、太平洋で取れるクロマグロの大部分を消費しているだけに、真っ青になるところだが、実は、日本が8月に「漁獲半減」を提案し、今回の決定に導いた。これにより、2024年には太平洋の成魚の資源量は4.3万トンに回復すると見込んでいる。

   今回の合意に沿って、日本の未成魚の漁獲量として、水産庁は既に4007トンの上限を設定。大きな網で魚群を追い込む「巻き網漁業」2000トンと、定置網や一本釣りなどの「沿岸漁業」2007トンに割り振り、うち沿岸漁業分は6海域に分け、それぞれに上限を設定し、超えないように監視する。具体的には、海域ごとに、上限の70%に達したら「注意報」、80%で「警報」、90%で「特別警報」、95%になったら漁業者に「操業自粛要請」を出す。もし上限を超えれば、その分を翌年の漁獲上限から減らすという徹底した管理を実施するという。

   最大の消費国である日本が厳しい規制を主張したのは、「そうしなければ本当に資源が枯渇してしまう」(漁業関係者)という危機感が根底にある。東大西洋で、未成魚の漁獲を原則禁止して資源回復につなげた成果があるほか、太平洋クロマグロは絶滅危惧種に指定される恐れがあることも、日本の行動を後押しした。

メキシコが猛反発、東側海域では合意できず

   同時に、日本はすでに自主規制をしてきていて、未成魚の漁獲量は2012年には3815トンまで減っているという事情も指摘される。既に4007トンという新たな上限を下回っているわけで、「実害は少ない」(同)という読みがあるのだ。

   太平洋クロマグロの未成魚漁は、漁獲量の6割を日本が占め、メキシコが約3割、韓国が約1割とされてきた。太平洋の東西海域を別々の国際機関で管理していて、メキシコについては東側の海域を担当する全米熱帯まぐろ類委員会(IATTC)で議論している。ちなみに、IATTCでは7月の会合で日本が半減案を示したのにメキシコが猛反発し、合意の見通しは立っていない。

   今回、WCPFCでは韓国が日本の提案に反対し、激論になった。といっても、韓国がクロマグロの大消費国であるわけではない。韓国は漁獲量を急速に伸ばし、2012年は1406トンになっている。これが、日本案では718トンに制限されるため、抵抗したのだが、資源回復の国際的な圧力に抗せず、最終的に受け入れた。

   今回の規制で、国内の価格はどうなるのか。比較的安価なメジマグロの流通が減って値が多少上がる可能性はある。ただ、日本人が食べているマグロは太平洋クロマグロだけではなく、大西洋クロマグロやミナミマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガと、多くの種類があり、「国内のマグロ類全体の流通量約40万トンのうちクロマグロは太平洋と大西洋を合わせても約2.1万トンと全体の5%程度」(水産庁)で、太平洋クロマグロの未成魚の規制強化でも、小売価格への影響は限られそうだ。

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