「組体操はいま、見世物としての性格を強め、巨大化・高度化、さらには低年齢化が進んでいる」――。名古屋大学大学院教育発達科学研究科の内田良准教授が2014年9月16日、「Yahoo!個人」に寄稿した記事が波紋を広げている。
内田氏は組体操の大型ピラミッドは、1人当たり最大200キロ近い負荷がかかっていることを独自に算出し、「これのどこが『教育』というのだろうか」と警鐘を鳴らしている。
高さ7メートルの10段ピラミッドも
組体操は今も運動会の花形演目として全国の学校で行われている。内田氏は各地の小中学校で10段ピラミッドを事例に、組体操は巨大化・高度化が進んでいるという。
100人以上の生徒が参加する大型ピラミッドは壮観で、地元紙に取り上げられたり、動画サイトで紹介されたりしている。中学生の日本記録は10段ピラミッドで、高さは7メートル近い。すぐそばに教員たちが補助として備えているが、大事故につながりかねないことは容易に想像ができる。
内田氏の算出によると、「10段(計151人)の場合、土台の生徒のなかでもっとも負担が大きいのは、背面から2列目の中央部にいる生徒であり、3.9人分の負荷がかかる」という。その重量は中学2年生男子の平均体重であれば190キロ、3年生なら211キロにも達する。「そんな無謀なことが『教育』という名の下、中学校や高校で取り入れられているのである」として、「かりに負傷者がゼロで済んだとしても、許されるべきことではない」と厳しく批判する。
内田氏はこれまでも組体操の危険性を指摘してきた。独自の統計によると、2012年度の小学校の体育的活動(授業だけではなく、行事を含む)の中で、組体操は跳箱運動、バスケットボールに続いて3番目に負傷事故件数が多い。1年生から6年生まで行うマット運動や鉄棒以上に事故が報告され、そもそも学習指導要領に記載がない組体操について、「そこまでのリスクを冒して、いったい何を目指しているのかということも考えなければならない」という。