4月(2014年)からの消費増税によって、経済は落ち込んだ。2013年10月に、消費増税を決めたとき、多くのエコノミストは消費増税に賛成し、消費増税の景気への影響は軽微であるといった。それはまったく間違っていた。それにも関わらず「想定内」という言葉を連発する。2013年から、(14年4‐6月期GDP速報値発表の)1か月前までの予想は大外れだ。ところが、1週間前に予想をちゃっかり修正し、その修正後の予想から見れば「想定内」というわけだ。
8月のこのコラムでも触れたが、実は、GDP統計は、調査して導き出す統計ではなく、政府の一次統計を加工した二次統計だ。だから、GDP統計の発表1週間前なら各種の一次統計が出そろうので、GDPを当てるのはそれほど難しくない。
「10%への消費増税」、やってもやらなくても景気は悪化?
「想定内」ということばには、このようなペテン師的な要素がある。じつは、これは政府・日銀にも当てはまる。現体制になって出された2013年4月26日の経済・物価情勢の展望によれば、2014年度の実質GDP成長率について、政策委員の見通しは1.0~1.5%。その中央値は1.4%だ。ところが、その1年後の2014年4月30日には、政策委員の見通しは0.8~1.3%、その中央値は1.1%と下方修正されている。
この経済・物価情勢の展望の数字は3か月ごとに見直されているが、7月の見直しでは、1%を割り、0%台の後半になるという。
この下方修正の理由は、消費増税による景気の落ち込みなのだが、黒田総裁は、(予定通り2015年10月に実施するか、14年末に政府が判断する)消費税率の10%への再引き上げをスキップ(先送り)するのは、リスクが大きいと懸念を示している。どういうリスクかというと、消費増税しないと財政の信任が失われ国債金利が上昇することである。
ここまでくると、経済に明るくない人は困惑するだろう。消費増税すると景気が落ち込むのに、それをやらないと金利が高騰し、やはり景気の腰を折ってしまう。この二つの意見が正しいとすると、消費増税はやるにしてもやらないにしても、景気が悪くなってしまう。これはおかしいのではないか。