慰安婦報道について朝日新聞に謝罪を求めた池上彰さんの連載原稿は、一転して掲載されたが、池上さんは、連載を続けるかの判断は保留中と報じられている。池上さんはいったい何を朝日に求めているのだろうか。
「まったくの白紙だ」。報道によると、池上彰さんは、朝日への月1回の連載「新聞ななめ読み」を今後も続けるかについて聞かれ、こう強調した。
「慰安婦報道での姿勢を見極めてから判断」
池上さんの原稿では、朝日が慰安婦誤報を認めたことを評価しながらも、謝罪が伴っていないことなどを指摘した。朝日の現役記者らからは、ごくまっとうな論評だとしてツイッター上で掲載拒否に疑問の声が上がったほどだ。
その掲載拒否を朝日が謝罪したことで、池上さんは、「過ちを認め、謝罪する」が今回は実行されたと評価した。しかし、次回以降については、白紙だとして、「掲載を続けるかは今後話し合って決める」とマスコミ取材に答えたとされている。
東京スポーツが2014年9月6日付記事で伝えたところによると、池上さんは、連載を続けるかについては、「慰安婦報道でのこれからの朝日の報道姿勢をしっかり見極めてから判断する」と東スポの直撃取材に答えた。東スポでは、その意味について、「次回の掲載までに読者への謝罪がなければ、池上氏のコラムはなくなることになるだろう」と解説している。つまり、池上さんは、誤報の謝罪に踏み切るまで、朝日に1か月の猶予を与えたというのだ。
東スポの記事には、池上さんの直接のコメントが書かれていないので、その真意が必ずしもはっきりしない。
池上さんは、朝日との今後のやり取りから信頼関係が取り戻せると判断したときに連載を続けるという意味などで言った可能性もあり、まだ分からないままだ。
朝日は、経緯説明でも誤報を謝罪せず
朝日新聞は、池上彰さんの連載原稿を掲載してお詫びした後、2014年9月6日付朝刊でその経緯を説明している。
しかし、慰安婦問題の誤報については、謝罪のコメントは見られなかった。ただ、検証記事後からの朝日関係者への脅迫などが激化することを懸念して池上さんの原稿掲載を断ったなどと、自己弁護しただけだった。朝日社内のだれが原稿のどの部分に過剰反応したのか、そしてどのように修整しようとしたのかさえ触れられていなかった。
池上さんに1か月の猶予とは何を意味するのか、朝日の経緯説明についてはどう思うのかについて取材したが、回答はまだ来ていない。
朝日新聞社の広報部に、その後の話し合いなどについて聞くと、「6日付朝刊紙面でご説明した通り、掲載を見合わせたことは、朝日新聞として間違った判断でした。池上彰さんとは誠意を持って話し合いを続けており、対応と結果については改めてお知らせします」とだけコメントした。