羊肉の価格が高騰し、庶民の味とも言えるジンギスカンが以前ほど気軽に味わえなくなりそうだ。
値上がりには、円安や燃料高による輸送コストの増加のほかに、世界的な需要高が影響している。とりわけ、中国の存在が大きい。
日本国内に流通する羊肉の7割はオーストラリア産
「松尾ジンギスカン」でおなじみのマツオはマトン500グラムを現行の617円から860円に値上げすると2014年9月1日、発表した。そのほか、上マトンや特上ラムなど羊肉を使った11商品を14~39%ほど、10月1日から一斉に値上げする。
ジンギスカンを製造、販売する、かねひろもマトンやラムの値上げをすでに4月1日、実施した。そのほか、スーパーなどの小売価格も高騰しているという。財務省の貿易統計を見ても、ラム(冷蔵・骨なし)の輸入価格は13年1月から14年7月にかけて6割以上高くなっている。
なぜ羊肉が高騰しているのか。マツオやかねひろの発表によると、円安や燃料高によるコスト増のほか、他国の需要増が影響しているという。その中で浮かび上がってくるのが、「中国の大量買い付け」だ。
もともと日本国内に流通する羊肉の7割はオーストラリア産だ。オーストラリア農業省のデータを見ると、日本へのラムの輸出量はこの数年7000トン台でほぼ横ばい。一方の中国は13年にアメリカを抜いてトップになった。11年の2万トンに比べて、13年は3.9万トンと約2倍に膨れ上がっている。
中国国内の食品偽装で輸入量が増加
中国はもともと屋台の串焼きなど、庶民に親しまれている。さらに近年の経済成長の影響により、ラムを使うしゃぶしゃぶ「火鍋」ブームが全土に広まり、消費量は増加傾向にある。また、牧草地の砂漠化が進んだことで、国内需要に生産が追い付かない状態が続いている。
さらに拍車をかけたのが2013年春に発覚した国内での食品偽装問題だ。人気外食チェーンなどで、ネズミやキツネの肉を加工した偽装羊肉が出回っている事実が明らかになった。さらに農薬で死んだ羊肉や病死した動物の肉を加工して販売するなどの事件も相次いで発覚。国産品への不信感が高まり、輸入の増加が加速した。
前出のマツオは需要増を「予想をはるかに上回るペースで急騰」と表現し、「価格改定をせざるを得ない状況に至りましたことは、甚だ不本意」という。かねひろも「内部努力では限界にきております」と釈明した。
羊肉以外にも中国のせいで日本での価格高騰につながる例は増えそうだ。