2014年9月3日に発足した第2次安倍改造内閣では女性5人が入閣した。第1次小泉内閣(2001年)と並ぶ過去最多とあり、女性の社会進出を内閣が自ら推し進めたという意味では一定の評価を得ているようだ。
しかし一方で人選に疑問の声も出てきている。中でも注目されているのが新設の「女性活躍担当相」に就いた有村治子氏(43)だ。「夫婦別姓制度」に反対の立場をとっていたことなどが指摘されている。
「夫婦別姓に反対する国民大会」に参加
有村氏は日本マクドナルドの勤務などを経て、2001年の参院選(比例)に自民党から公認を受け立候補、初当選を果たした。現在は参院3期目で、「マタニティマーク」を全国に広げたことや、女性の再就職を後押しする政策に取り組んできたことなどが女性関連の実績として報じられている。
プライベートでは2女の母であり、在職中の出産という珍しさから議員と子育ての両立に奮闘する姿が新聞で紹介されたこともあった。
第2次安倍改造内閣では「女性活躍担当相」だけでなく、男女共同参画、少子化対策、規制改革といった関係分野を含む7つの所管を兼務する。現時点では担当相が具体的にどのようなことをするのか分からないが、安倍首相は3日の会見で
「全ての女性がその生き方に自信と誇りを持ち、活躍できる社会をつくるため、総合的かつ大胆な政策を進めてもらいたいと期待しています」
と有村氏に熱いメッセージを贈っていた。
女性閣僚5人の中でも「女性活躍担当相」という成長戦略の看板的なポジションに起用された有村氏だが、過去の活動や所属団体をたどると違った顔も見えてくる。
実は有村氏は、男女共同参画などに反対する保守系政治団体「日本会議」の議員懇談会のメンバーだ。2010年には日本会議が主催した「夫婦別姓に反対する国民大会」に拉致担当相になった山谷えり子氏とともに参加していた。
「国政の判断に迷いがあると靖国の英霊にお尋ねする」
また、2009年には「堕胎根絶」などを掲げるNPO法人「天使のほほえみ」で講演も行っていて、中絶に慎重な姿勢を示していた。
インターネット上ではこうした立場が早くから指摘され、
「夫婦別姓反対で、中絶も反対で、伝統的な家庭を守りたいんだよね。そんな人が考える『女性活躍』…恐ろしいなあ」
「およそ『女性活躍推進』とはまるっきり反対の信条をお持ちのようですが、つまりこれが自民党の意思ってことでしょうね」
などと「女性活躍担当相」への起用を問題視する声が相次いだ。
加えて、靖国神社との関わりも注目を集めている。
有村氏は「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」のメンバーであり、先の「天使のほほえみ」の講演要旨には
「国政の決断で迷いのある時など、一人で靖国神社にお詣りして、英霊にお尋ねする。国難の時に生命を捧げられた英霊が、『最後に守るべき価値観とは何か』をお教え下さるのだと思う」
との発言も掲載されていた。
また、複数の新興宗教からも支援を受けていることも明らかになっている。01年の参院選前には真如苑と黒住教からの支援が読売新聞に報じられ、13年の参院選後には神道政治連盟、仏所護念会教団、崇教真光、黒住教、天台宗、世界救世教・主之光教団の6団体からの支援が朝日新聞に報じられていた。
こうした面に驚いた人も少なくないようで、インターネット上には
「有村治子女性活躍担当大臣の経歴がすごい。再魔術化というよりカルト化する日本」(社会学者・毛利嘉孝氏)
などと言う声も上がっている。