いわゆる従軍慰安婦問題をめぐる記事への対応で、朝日新聞への批判が収まりそうもない。中でも批判を加速させているのが産経新聞と週刊誌だ。通常、木曜日の紙面には同紙を批判することが多い週刊文春と週刊新潮の広告が掲載されるが、2014年8月28日の紙面にはなかった。朝日新聞が両誌9月4日号の広告掲載を拒否したからだ。
過去には朝日新聞を批判する内容の広告は数多く掲載されており、仮に朝日新聞側に不都合な表現があったとしても「黒塗り」されることが大半だった。広告全体の掲載が拒否されることは珍しいが、何が問題視されたのか。
文春は「朝日新聞『売国のDNA』」
朝日新聞以外の複数の全国紙に掲載された文春・新潮の広告を見ると、両誌ともにスペースの3分の1程度を朝日新聞批判に割いている。文春は
「朝日新聞『売国のDNA』」
という主見出しとともに、わき見出しで8つの批判記事の内容を紹介している。
新潮では
「『朝日新聞社』の辞書に『反省』『謝罪』の言葉はない!」
の肩見出しと
「 1億国民が報道被害者になった『従軍慰安婦』大誤報!」
という主見出し、5つのわき見出しで構成されている。
いずれの広告も朝日の紙面に掲載されることはなかったが、掲載を断られた文春と新潮の対応は分かれた。
文春を発行する文芸春秋は2014年8月27日、朝日新聞に対して社長室名で
「新聞読者が当該記事のみならずその他の記事の広告まで知る機会を一方的に奪うのは、言論の自由を標榜する社会の公器としてあるまじき行為であり、厳重に抗議します」
などとする抗議文を送ったと発表した。
新潮社は、J-CASTニュースの取材に対して広報宣伝部の担当者が経緯を明かした。
担当者によると、毎週火曜日に「審査原稿」と呼ばれる広告原稿を朝日側に提出し、審査で表現に修正を求められて「黒塗り」原稿が掲載される際も、水曜日の昼には審査が終了して何らかの形で「決着」するという。
新潮側の説明によると、朝日側は肩見出しの「反省」の文言と、わき見出しの「長年の読者が見限り始めて部数がドーン!」という表現を問題視。慰安婦問題をめぐる報道ではすでに反省を表明しており、部数が減少している事実はないなどと主張したという。新潮側は見解の相違だとして修正を拒否したところ、新潮発売前日の水曜日、8月27日の夕方になって朝日新聞社広告局のメンバーが新潮社を訪れ、修正に応じなければ広告全体の掲載を拒否することを通告したという。
新潮は「なぜ広告掲載を拒否するのかについて実態を検証」
新潮社の担当者は
「抗議文を送るという形はとらずに、なぜ広告掲載を拒否するのかについて実態を検証します。来週号で特集記事を掲載予定です。お楽しみに」
と話している。きわめて厳しい内容の批判記事が掲載されるとみられる。
朝日新聞社広報部では、広告掲載が拒否された経緯について
「お尋ねの件に限らず、個々の広告の掲載経緯などについては、取引内容に関わりますので公表していません」
とコメントしている。
ただ、朝日が文春・新潮の広告掲載を拒否したわずか3日前の8月25日の朝日紙面に掲載された広告では、
「本誌に抗議してきた論拠に重大疑問 原発事故『吉田調書』も『朝日の論理』で歪められた」(週刊ポスト)
「『慰安婦報道』で韓国を増長させた朝日新聞の罪と罰」(週刊現代)
といった朝日批判の文言が散見される。
同じく批判だが、「文言」の微妙な違いなどが掲載かどうかを分けたのだろうか。