高橋洋一の霞ヶ関ウォッチ
安倍首相VS石破幹事長の蹴飛ばし合い 水面下でなく正面切って経済政策で論争を

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   9月3日(2014年)の内閣改造で、焦点になってきたのが、石破茂幹事長の処遇だ。党内人事の話が、これだけ早くからオープンになることが驚きだ。

   ただし、人事なので本来は、安倍晋三首相と石破幹事長の2人の間だけの話のはずだ。それが、先月(7月)から、石破幹事長の側近らから漏れていた。もっとも、側近側から見れば、打診があった安保相を受けてしまうと、一括提出される集団的自衛権の関連法改正案が国会を通るまで「磔(はりつけ)」になるわけで、来2015年秋の自民党総裁選で大きなマイナスになるというニュアンスだ。ただし、石破幹事長本人は、自分の最も得意とする安全保障分野なので、少なくとも安倍首相には直接否定的な反応ではなかったのではないか。

首相に対する政治的な方便

   7月末から、そのような状況で、なんとなく石破幹事長は保留しつつも安保相を受けるのではないかというムードもあった中、先週末から安保相を拒否という情報が石破幹事長周辺から流れ始めた。

   その理由が、安倍首相との安全保障政策の隔たりという。ただし、公明党と政策協議をしてきたわけで、当面の問題では差異はほとんどないだろう。安倍首相に対する政治的な方便と思ったほうがよく、安倍首相と政治的に対峙するという意味だ。

   政治の世界ではこうした闘争はよくあることで、しばしば本人同士ではなく、グループの側近といわれる人たちが代弁する。しかし、驚いたのは、石破幹事長本人が、8月25日のラジオ番組で、「首相と100%(考えが)一緒の人が答弁するのが一番いい。『違う』と答えたら、国会が止まる」公言してしまったことだ。

   これは、良くも悪くも、石破幹事長らしい。しかし、本人の口から直接言わなければ流せることも、表だっていわれたら引けなくなることもある。しかも、人事は安倍首相の専権事項なので、他の人が公言してはいけない。

消費税再増税「党内でじっくり議論してもらうのもいい」

   これで思い出されるのは、7年前に石破氏が公言した、当時の安倍首相退陣論だ。2007年7月の参院選で自民党は惨敗した。そのときの石破氏のものいいは、「総理は選挙の苦労もしていない。総理が退陣しなければ自民党が終わってしまう」と、安倍首相への個人攻撃も含めて辛辣なものだったことを記憶している。おそらく安倍首相は決して忘れていないだろう。石破氏は、麻生政権の時にも、麻生下ろしに加担したことがある。

   こうした状況から見れば、今後は「安倍首相対石破氏」という対立構図になる公算が高い。もちろん老獪な安倍首相であるので、閣内の他ポストを提示して、閣内「座敷牢」にする可能性もまだある。「石破氏 地方創生相の方向」(産経新聞8月28日付朝刊)といった報道もでている。

   ただし、石破氏が安倍内閣の外で対抗勢力になっても、今の自民党内の抗争であって、日本にとって悪いことでもない。というのは、政治抗争は、しばしば政策論争を伴うからだ。

   安倍首相と石破氏の政策観の違いは、安全保障より経済政策のほうがより大きい。4月からの消費税増税で景気の先行きが危ういが、この際、10%への消費税再増税を強行するかどうか、増税勢力はそれだけは避けてもらいたいだろうが、党内でじっくり議論してもらうのもいい。10%への再増税は政治的に大勢としては決着済みであるが、政局になると何が起こるかわからない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。10年から嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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