広島市が2014年8月25日、土砂災害による行方不明者28人の名簿を公表した。広く情報提供を求めて捜索活動に役立てるのが狙いだが、個人情報の保護との兼ね合いがあり、公表までに時間を要した。
広島市の対応について、インターネット上では評価が分かれている。公表自体は多くが支持しているものの、タイミングの遅さを指摘する声も少なくない。
「緊急性、合理性が担保されると判断」
行方不明者の数は、県警と消防局が把握する不明者数が異なる混乱が生じるなど、発生当初から増減を繰り返していた。不明者とされていた人の中には災害時に外出していて無事だったケースもあり、迅速な安否確認が求められていた。
把握している不明者を公表して安否に関する情報を集められれば、不明者を正確に絞り込むことができ、捜索を円滑に進めることができる。だが、広島市は個人情報保護の観点から公表に慎重な姿勢を示していた。
広島市の個人情報保護条例では、外部に個人情報を提供できるのは「人の生命、健康、生活または財産を保護するために緊急かつやむを得ないと認めて利用し、または提供するとき」と規定されている。
松井一実市長は25日の会見で「いなくなったかどうかわからない状況で公表するのはどうかという悩みがあった」と説明した。それでも「法律を読み込んで、緊急性や合理性が担保されると判断した」として、自身の責任で公表に踏み切ったという。
名簿には氏名のほか、住所、年齢、性別の情報が載っているが、プライバシーに配慮して住所は「丁目」まで、年齢は「代」にとどめられている。