タイで日本人実業家の男性(24)が多くの子どもを代理出産させていたとされる問題で、それを報道する週刊誌の発売を知らせる新聞広告が異様なことになっている。
広告に掲載された男性の名前などの記述が伏せ字で、「●●●」といった表記になっているのだ。
朝日新聞の広告は「●通信御曹司・●●●●」
週刊文春と週刊新潮の発売日には新聞各紙に広告が掲載され、朝日新聞と読売新聞には同じサイズで広告を出稿するので、同じ内容の広告が両紙に載るはずだ。ところが2014年8月20日はいつもと違っていた。8月28日号の週刊文春と週刊新潮は、伏せ字の処理が施されていた。
たとえば朝日新聞の週刊文春の広告は、
「生命倫理への冒涜?『1000人出産計画』のおぞましい動機―タイ代理出産
●通信御曹司・●●●● 乳幼児「育成農場」に初潜入!」
と企業名の一部と男性の名前が伏せ字になっている。
一方で、読売新聞は以下のような形だ。
「生命倫理への冒涜?『1000人出産計画』のおぞましい動機―タイ代理出産
IT大手御曹司・●●●●乳幼児「育成農場」に初潜入!」
男性の名前を隠しているのは共通しているが、企業名の部分は「IT大手」になっていて、より特定しにくくなっている。
では、両紙の週刊新潮の広告はどうなっているのか。朝日新聞に掲載されたバージョンは、
「子ども1000人で『●帝国』!?『●通信創業者』ご長男の人間牧場」
と、同じく企業名の一部が伏せ字だ。
一方、読売新聞は
「子ども1000人で『光帝国』!?『●●●創業者』ご長男の人間牧場」
と朝日新聞と異なり「光」の文字が入っていることがわかる。だが企業名を直接示す箇所はすべて隠されて読めない。
他にも日本経済新聞では、企業名と名前の部分が真っ黒に塗りつぶされた「黒塗り」になっていた。産経新聞と毎日新聞は文春に関しては男性の本名が伏せ字、新潮の広告には伏せ字はなかった。
電車の中吊り広告は「光通信の創業者…」
広告が伏せ字にされた2誌にはどのようなことが書かれているのか。週刊新潮は記事中で「コンドミニアムには21人もの乳幼児の住民登録がなされていました。保護された幼児たちの顔立ちは、欧米系もあればアジア系もあった」とタイ現地紙記者のコメントを紹介し、「彼の父親はあの『光通信』の創業者・重田康光氏(CEO兼会長)」という記述があった。
週刊文春では「胎児に障害や、健康状態に少しでも異常がみられるようなら即刻中絶してもらう」という条件を提示されたことを代理出産したタイ人女性が明かしている。そして、「父親と見られる男性は、IT企業『光通信』創業者・重田康光氏(49)の長男、光時氏(24)と判明した」
などと書いている。
電車の中吊り広告には新聞各紙のような伏せ字はなく、すべて書き記してあり、週刊文春と週刊新潮の公式サイトにも堂々と掲載されている。新聞社が名前を出すことを嫌い伏せ字にしたと考えられる。
朝日新聞社広報部は、
「お尋ねの件に限らず、個々の広告の掲載経緯などについては、取引内容に関わりますので公表していません」
とコメントしている。