産経新聞のウェブサイトに掲載された記事が韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉を傷つけたとしてソウル中央地検が筆者の加藤達也ソウル支局長(48)に出頭を求めている問題が、外交問題に発展しそうだ。
岸田文雄外相と韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相がミャンマーで会談した際にも、この問題が話題にのぼったからだ。岸田外相は報道の自由との関係から、韓国当局の対応について懸念を伝えた。韓国メディアはこの発言に反発しており、産経新聞が謝罪すべきだと主張している。
記事問題視した市民団体が検察に告発
記事は、セウォル号沈没事故が起こった2014年4月16日に朴大統領が7時間ほど所在不明になり、その間、ある男性と密かに会っていたとする韓国メディアの「うわさ話」をもとに書かれている。この産経記事を韓国の保守系の市民団体が問題視し、朴大統領に対する名誉棄損だとして検察に告発した。韓国メディアによると、検察は8月12日に出頭するように求めているが、加藤支部長は出頭の時期を遅らせるように求めているという。
これとは別に、大統領府も産経新聞に対して民事・刑事の両面で責任を問う構えだ。
日韓メディアの報道を総合すると、ミャンマーのネピドーで8月9日行われた日韓外相会談では、岸田外相が、
「報道の自由、日韓関係の観点から心配している」
と懸念を表明したのに対して、尹外相は
「産経新聞が根拠のないデマを引用して悪意をもって報道し、隣国の国家元首の名誉を深く傷つけた点をきわめて遺憾だと考える」
と応じたという。
このやり取りで、事態はさらに大きくなりそうだ。現時点で最もこの問題を重要視しているとみられるのが東亜日報で、8月11日の社説で「産経新聞の韓国大統領冒涜、度を越している」と見出しを掲げた。
社説では、記事を、
「国内のある新聞のコラムと証券街情報誌に飛び交うデマを事実確認もなしに巧妙に混ぜて疑惑を増幅させた」
と非難した上で、記事を削除し謝罪するように求めた。
朝鮮日報コメント欄「大統領の所在が7時間も分からないことの方が大きな問題」
「今回の報道は、やはり朴大統領が女性であることを念頭に置いて意図的に歪曲した女性卑下的な性格が強い。韓国の憲法は報道機関と表現の自由を保障しているが、他人の名誉を傷つけて人格を冒とくする自由まで許容してはいない」
「産経新聞報道は国民感情を刺激してはいるが、検察が捜査中であるだけに大統領府まで乗り出すのは慎重になる必要がある。 産経新聞が仮にも報道機関ならば、先に丁重に謝ってインターネットの関連記事を削除することが問題を解決する順序というものだろう」
また、岸田外相の発言については「容認し難い」とした。
東亜日報の社説にある「国内のある新聞」とは、朝鮮日報のことを指す。朝鮮日報も今回の問題を報じているが、産経記事については、
「当時、朴大統領が秘密裏に接触した男性と一緒にいたといううわさが証券街情報誌等を通して回っているとし、現政権がレームダック(に入っている)とも評した」
とあるのみで、自社の記事が「ネタ元」であることには触れていない
この記事のコメント欄には、
「倭人新聞の支局は閉鎖しろ」
「すぐに追放しろ」
といった日本批判はあるものの、朴大統領を批判する内容のものも多い。
「記者の呼び出しは大きな問題ではなく、大統領の所在が7時間も分からないことの方が大きな問題」
「朴大統領は、この機会に疑惑を解消すべき。謎に包まれた政治家ではなく、国民とコミュニケーションを持つ機会を増やすべきだ」