笹井氏、3月に「心理的ストレス」で1か月入院 理研広報室長は「普段とは違う」と感じていた

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   理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(神戸市、CDB)の笹井芳樹副センター長(52)が2014年8月5日朝、隣接する先端医療センター内で首をつって自殺したことを受け、理研の加賀屋悟広報室長が同日午後、文部科学省で会見した。少なくとも4通ある遺書の大半の宛先については明らかにせず、内容についても「把握していない」とした。

   ただ、笹井氏は「疲労困憊」の状態が続いており、3月には「心理的ストレス」を理由に入院していたことが明らかにされた。加賀屋氏が笹井氏と電話で打ち合わせをした際も「普段とは違う」と感じていたという。

遺書は秘書の机に少なくとも1通、自殺現場に3通

会見に臨む笹井芳樹発生・再生科学総合研究センター(CDB)副センター長(14年4月撮影)。3月には「心理的ストレス」を理由に入院していた
会見に臨む笹井芳樹発生・再生科学総合研究センター(CDB)副センター長(14年4月撮影)。3月には「心理的ストレス」を理由に入院していた

   笹井氏は9時前に首を吊った状態で職員に発見され、警察に通報。駆け付けた先端医療センターの医師からは「死亡している」との発言があったが、笹井氏は神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)に搬送され、11時3分に死亡が確認された。

   遺書は秘書の机の上と自殺現場で発見された。秘書の机の上の遺書は人事課長と総務課長宛てだということは分かっているが、何通あったのかはまだ分かっていない。自殺現場で発見されたのは3通。小保方晴子ユニットリーダー宛のものもあったという報道もあるが、3通の宛先や内容については「ご遺族の心情を優先したい」として公表されなかったが、遺族の了解が取れた上で公共性が高いと判断された部分については今後公開する考えだ。

   加賀屋氏の説明によると、笹井氏は笹井研究室のグループディレクターの業務を中心にこなしており、最後に出勤が確認されたのが8月4日。5日も出勤予定だったという。4日から徹夜したのか、一度帰宅して5日に出勤したのかは明らかになっていない。

通常よりも無気力な状態が続いていた?

笹井副センター長の亡くなった先端医療センター(奥の建物が理化学研究所発生・再生科学総合研究センター 14年8月5日撮影)
笹井副センター長の亡くなった先端医療センター(奥の建物が理化学研究所発生・再生科学総合研究センター 14年8月5日撮影)

   自殺の兆候については、加賀屋氏は

「具体的にこういう(自殺する)兆候があったということは聞いていない」

とした。ただ、5~6月に笹井氏に対する取材申し込みについて電話で打ち合わせする中で、「普段の笹井先生の応答の対応とは違う」とも感じたという。具体的には、「力のなさ」を感じたといい、

「色々な取材のケースについても、(普段は)積極的に責任を持って受けるというところが、『なかなか』というところが…」

と振り返った。通常よりも無気力な状態が続いていたようだ。その2~3か月前の3月には「心理的なストレス等」を理由に1か月程度入院していたことも明らかにされた。笹井氏は退院からそれほど日か経たない4月16日に会見に臨み「シニアな共著者として心痛の極み」などと陳謝した上で「生データやノートを見る機会がなかった」として、「改ざん」や「ねつ造」に気づくのは難しかったなど釈明を迫られていた。

   一部では心療内科に通院していたとの報道もあるが、「(広報室としては)細かい健康情報については確認していなかった」との説明にとどまった。

「処分を引き延ばした上の自殺なのでは」という指摘も

   小保方ユニットリーダーも笹井氏の自殺を知り、「非常にショックを受けている」という。理研の職員2人でケアにあたっている。

   笹井氏が職場で自殺したことで、小保方氏以外の理研メンバーにも動揺が広がることも考えられるが、STAP細胞の検証実験については、加賀屋氏は「影響がないような形で進めたい」とした。

   理研の調査委員会が2014年4月1日に発表した最終報告書では、笹井氏について

「研究不正行為を行ったわけではないが、その責任は重大」

と非難しており、6月に発表された第三者委員会の報告書でも、

「結果として笹井氏は生データの検証を全く行うことなく、自らの職責を果たさなかった」
「成果主義に走るあまり、真実の解明を最優先として行動する、という科学者として当然に求められる基本を疎かにした笹井氏の行動は、厳しく責任が問われるべきもの」

として、笹井氏らの辞任を求めていた。たが、現時点で笹井氏の処分は決定しないままの状態が続いてきた。このことを念頭に置いた

「処分を引き延ばした上の自殺なのでは」

という指摘には、加賀屋氏は

「そういう一面はあると思っている。その辺については、しっかり受け止めて対応していきたい」

と表情を曇らせた。

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