朝日新聞は2014年8月5日の朝刊で、いわゆる従軍慰安婦問題に関する特集記事を掲載した。1面で編集担当役員が趣旨を説明し、特集面で大きく5つの論点を検証するという構成で、済州島で若い女性が強制連行されたとするいわゆる「吉田証言」については「虚偽」と結論付け、軍需工場に動員された「挺身隊」と「慰安婦」の混同があったことも認めた。
「強制性」については、「女性たちが本人の意に反して慰安婦にされる強制性があった」と指摘した。
「当時、虚偽の証言を見抜けませんでした」
1面には杉浦信之・編集担当役員による「慰安婦問題の本質、直視を」と題した署名記事を掲載。一部事実関係に誤りがあったことを認めたものの、
「そのことを理由とした『慰安婦問題は捏造』という主張や『元慰安婦に謝る理由はない』といった議論には決して同意できません」
と主張した。
ただ、以前から信頼性がないとして問題になっていた「吉田証言」については、
「済州島で200人の若い朝鮮人女性を『狩り出した』」などとする吉田清治氏の証言については「虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした」
として誤報だと結論づけた。
「人さらいのように連行」は事実なし
強制連行の有無については、日本の植民地だった朝鮮半島や台湾では、「軍などが組織的に人さらいのように連行した資料は見つかっていません」と結論づけたが、インドネシアなど日本が占領していた地域では「軍が現地の女性を無理やり連行したことを示す資料が確認されています」とした。
「挺身隊」と「慰安婦」の混同については、当時は慰安婦問題に関する研究が進んでいない上に、記者が参考した資料でも混同があったことから「誤用しました」とした。