北海道電力が電気料金の再値上げを経済産業省に申請した。値上げ幅は、家庭向けが17.03%、企業向けが22.61%。2014年11月にも適用される見通しで、前年9月に続く値上げとなる。
申請どおりに認可されれば、標準的な家庭の電気料金は現行の月額7233円から8302円に、1069円も上昇。東日本大震災前(11年2月)の6177円からは、2125円も上昇することになる。道内の消費や生産活動には大きな打撃となりそうだ。
標準家庭の電気料金、月額1069円も上昇
北海道電力が電気料金の再値上げを申請したのは2014年7月31日。川合克彦社長が、資源エネルギー庁の上田隆之長官に申請書を手渡した。東日本大震災後、東京電力や関西電力など電力7社が値上げしたが、再値上げは初めて。経済産業省は8月上旬に値上げ幅を審査するための専門委員会を立ち上げる。
審査段階で経費削減や資産売却の積み増しを求められるため、値上げ幅が圧縮される可能性がある。
北海道電力は13年9月に泊原子力発電所1~3号機が、同12月以降に順次稼働すると想定し、家庭向け料金を7.73%引き上げた。その後も原子力規制委員会による泊原発の安全審査が長引いているため再稼働が遅れ、収益改善のメドが立っていない。
また、同社は14年3月期まで、3期連続の経常赤字を記録。自己資本を厚くするため、日本政策投資銀行から500億円の出資も受け入れる。赤字脱却に向けて、再値上げが必要と判断した。
とはいえ、電気料金の再値上げが必要なのは北海道電力だけではない。周知のとおり、震災後、すべての原発が現在停止している。その電力を補うため、火力発電がフル稼働、LNG(液化天然ガス)の輸入量が増えて、電力会社は電気料金を引き上げたが、なおも大幅な赤字が続いている。
電気料金を値上げしても赤字が続いている原因は、経産省が13年9月の改定時に、原発が動いている前提で値上げ幅を圧縮したためだ。
たとえば北海道電力にしても、値上げ後に泊原発が想定より早く稼働した場合は「値下げを実施する考え」というが、当の泊原発は稼働のメドもついていない。稼働しないのだから、「発電コストは下がらない→赤字体質は変わらない」といった悪循環になっている。
同じことが、他の電力会社でも起こっているわけ。甘利明経済再生担当相は、「(原発の再稼働を)このまま放置すると、産業用の電気料金は震災前の5割上がる」と述べている。
「電気料金をごまかすのはやめよう」
いわば北海道電力は、その「先兵」にすぎない。このままだと電力各社がこぞって電気料金の値上げを申請する可能性がある。関西電力が検討に入っているとの情報もある。
それでなくとも、電気料金は毎月のように上昇している。4月以降は、消費税率が5%から8%に引き上げられた。また燃料費調整制度により、電力各社が発電に使う液化天然ガス(LNG)や原油などのコストは月単位で電気料金に加算(減算)されていることもある。
アベノミクスによる円安の影響もあるが、LNGや原油の価格自体が高止まりしている。
太陽光発電などの、「再生可能エネルギーによる発電を促進すればいい」という声があるが、これも「賦課金」として電気料金に加算されている。電力会社が企業や家庭などから買い取っている電力は、回り回って最終消費者である国民が負担している。
折しも、日本経済新聞(2014年7月31日付)は企業の電力購入コストについて、14年度は10年度に比べて平均で約22%増える、と報じた。企業は節電や自家発電などの自助努力に加えて、電気料金が電力大手よりも割安な新電力を活用。生産水準などを維持しながら電力購入コストの増加を一定程度抑え込んではいるものの、節電などで電気料金の値上がり分を吸収するのは難しいとしている。
経済評論家でブロガーの池田信夫氏は、2014年07月30日付のニューズウイーク「VOICES」で「電気代が5割上がる現実を直視しよう」と、書いている。原発の再稼動は「安倍首相の政治決断」と指摘。「原発停止の損失を利用者が意識しないから、『電力は足りている』という人が出てくる。電気料金をごまかすのはやめ、5割値上げして利用者に負担させるべきだ。そういうコストを直視したうえで、エネルギー問題を考える必要がある」と、主張している。