NHKの取材班が、理化学研究所の小保方晴子氏を「取材のため」に執拗に追い回し、全治2週間のけがを負わせる事態となった。
NHKのやり口を見ていると、まるで欧米のパパラッチを思わせ、過剰取材だとして批判する声は多い。
正攻法での取材要請が退けられため、強引なやり口に?
まるで「大捕物」だ。2014年7月23日夜、理研を車で出た小保方氏をNHKの取材班がバイクで追跡。そこで近くのホテルに「避難」すると、記者やカメラマンがついてきたという。カメラを回し質問を浴びせる記者。たまらずトイレに飛び込んだが、そこまで女性スタッフが追いかけてきた。最終的には「強行突破」を図ったが、その際に相手側と衝突し、頸椎ねんざと右ひじ筋挫傷で全治2週間の診断を受けたという。NHK側は、小保方氏の代理人を務める三木秀夫弁護士を訪れ、謝罪したそうだ。だが三木弁護士は「NHKに損害賠償を含めた断固たる措置を取らざるを得ないかもしれない」と話した。小保方氏も三木弁護士に「まるで犯罪者扱いだ」と憤りを隠さなかったという。
実はNHKでは7月27日の「NHKスペシャル」で、「調査報告・STAP細胞不正の深層」という番組を放送予定だ。その紹介内容には「関係者への徹底取材を通して論文の不正の実態に迫る」とある。実際に三木弁護士には取材の質問書が届き、これを断っていたとも報じられている。だが「STAP論文問題」の中心人物である小保方氏のコメントは欠かせない。正攻法での取材要請が退けられため、強引にでもその口を開かせようとしたとも考えられる。
背景は違うが、過去には過激な取材で関係者が負傷し、大事件に発展したケースがある。1986年、ビートたけしさんによるいわゆる「フライデー襲撃事件」だ。写真週刊誌「フライデー」の記者が、たけしさんと親しくしていたという女子学生に突撃取材を試み、断られても無理に話を聞こうとした末にけがをさせたのだ。これが引き金となり、たけしさんは弟子数人を連れてフライデーの編集部を襲撃、逮捕されるてん末となった。一方の記者も、傷害罪で罰金10万円の有罪判決が1990年に確定した。
過剰取材はしばしば問題視されている。フィギュアスケートの安藤美姫さんは2013年4月に女児を出産し、父親を公表しなかったこともあってマスコミ報道が過熱した。安藤さんは8月に会見を開き、自分以外の家族や親戚に対する夜中の電話や外出時の尾行、待ち伏せといった「行き過ぎた取材」をやめてほしいと異例の申し入れをした。
右ひじのけがで「本格復帰」遅れるのは避けられない
NHKの取材班は、長時間にわたって小保方氏につきまとったようだ。今回、小保方氏に非は全くない。記者から質問を投げかけられたが回答を拒んだそうだが、その場を切り抜けるなら支障のない範囲でコメントする手もあったかもしれない。精神的に余裕がなかったのか、取材と称して追い回される状況にパニックになり、恐怖すら感じていたのだろうか。
注目は、STAP細胞の検証実験への影響だ。右ひじのけがということもあり、小保方氏は「実験に支障が出る。悔しい」と語ったという。7月から理研での実験に参加しているが、11月までには一定の成果を出さなければならない。しかも入院などでブランクが生じたために、現段階では本格実験に入る前の準備と位置づけられている。実験では微妙な手の動きが要求され、そのための「勘を取り戻す」最中のけがにより、本格復帰が遅れるのは避けられそうもない。
インターネット上では、NHKを批判する意見が大部分だが、小保方氏に対する少々いじわるな書き込みも見られた。「これでSTAP細胞が無いことを証明しないで済むね」「やましいこと無ければ逃げる必要ない」「逃げ回っても解決しない」という具合だ。「STAP細胞はあります」と断言して以降、目に見える結果が提示されていない現状にいらだちを募らせている人が少なくないのかもしれない。