志望理由書や面接を重視して合否を決めるAO(アドミッションズ・オフィス)入試で合格した学生の退学率が、入試方法別で最も高いことが読売新聞社の調査で明らかになった。
少子化で学生の獲得競争が激しくなるなか、入試の難易度が「準難関」に達しない大学では、AOは学力を適切に評価しないまま入学させる「ザル入試」だとの指摘もある。見方によっては、退学率の高さが指摘の正しさを裏付けたとも言えるが、大学による差も大きいようだ。
一般入試の退学率5.9%に対してAO入試は15.5%
調査は全国744国公私立大学を対象に行われ、約89%にあたる659が回答した。その内容は2014年7月9日と10日の読売新聞に特集記事として掲載された。調査では、10年(医学部など6年生学部は08年)に入学した人のうち、14年3月までに退学した人の数を入試方法別に聞いた。その結果、一般入試(センター試験含む)入学者の退学率は5.9%だったのに対して、AO入試入学者の退学率は15.5%だった。AO入試で入学した人の6人に1人が「ドロップアウト」している計算で、記事では、
「早ければ入学の半年以上前に合格が決まることなどで学習意欲を失わせているとの指摘があり、見直しを迫られる大学も出そうだ」
と論評した。
では、大学別にみるとどうか。首都圏の約230校で最もAO入試の退学率が高いのは東京理科大の50%。同大は10年4月の入学者を最後にAO入試を取りやめており、10年4月にAOで入学した人は2人のみ。そのうち1人が退学したため、退学率が50%になった。
2番目に退学率が高かったのが嘉悦大の41.7%。一般入試の退学率も34.7%で、全体的に苦戦しているようだ。それ以降は筑波学院大(AO入試38.9%、一般入試18.2%)、湘南工科大(AO入試35.8%、一般入試16.2%)、城西国際大(AO入試34.2%、一般入試16.1%)などが続いている。
ただ、AO入試の退学率の欄が空欄になっている(非公開または無回答)学校も90近くあり、さらに退学率が高い学校がある可能性もある。
慶大は一般入試の方が退学率高い
では、AO入試の退学率が低い学校はどこか。0%と回答した大学は、学習院女子大や宇都宮大など12校あり、そのうち7大学を国立大が占めた。次に低かったのが慶應義塾大の1.7%で、一般入試の退学率は3.4%とAOの2倍だった。
キャンパスごとの退学率は明らかではないが、日本で最初にAO入試を取り入れたのが同大の湘南藤沢キャンパス(SFC)。かつては一青窈(37)さんや、元「モーニング娘。」メンバーでテレビ東京アナウンサーの紺野あさ美さん(27)がAO入試で合格し、卒業した。現役生としては、14年4月にAKB48の竹内美宥さん(19)や女優の二階堂ふみさん(19)が入学したばかりだ。
他の東京六大学のAO入試の退学率は、早稲田大が5.3%(一般入試3%)、明治大が2.4%(一般入試3.1%)といった具合で総じて低い。「準難関」以上では、AO入試が入学者選抜の手段として機能しているとの指摘もあり、指摘が調査結果で裏付けられた形だ。法政大、立教大は調査に対してAO入試の退学率を回答しておらず、東京大はAO入試を行っていない。
今回の調査結果は、14年9月中旬に発売される書籍「大学の実力」(中央公論新社)に収録予定だ。