2014年7月10日、中咽頭がんを患っていることを公式サイトで発表した音楽家の坂本龍一さん(62)が脱原発運動を率いてきた立場から放射線治療を拒否していると報じられ、ファンや脱原発派の間で動揺が広がっている。
報じたのは中咽頭がんの事実を正式発表に先がけてスクープしたスポーツニッポンだ。7月10日付の一面で「放射線治療拒否 坂本龍一反原発貫く」と大見出しを打った。
「本当に本人がいったの?」
スポーツニッポンの記事では、坂本さんは反原発運動の先頭にたってきた立場から咽頭がんに効果があるとされる放射線治療を拒否する考えを主治医に伝えていると報じていた。「自らの命にかえても『反原発』だけは譲れないという不屈の精神で、世界の"教授"が闘病生活に入る」と盛り立てている。
記事はインターネット上でもすぐに注目を集めた。さまざまな声が寄せられるも放射線治療拒否の姿勢を支持するものはほとんど見られず、大多数が「原発問題と放射線治療は別次元の話」だとして
「もう何に反対してるのかわかんないな」
「まるで信仰のために輸血を拒否したどこぞの宗教の信者のごとくあまりにも非合理すぎてあきれ、同情する気が失せた」
「有名なこの人が治療拒否することで、他の反原発の人たちが病気になって放射線治療しにくくなるということは考えなかったのね」
「ならレントゲンも拒否してるのかしら」
などと口々に意見した。ファンや脱原発派からは「本当に本人がいったの?」と記事を疑う声も相次いだ。
エイベックス「反原発を理由に拒否することはない」
当の坂本さんは10日、
「6月末のこと、わたしには中咽頭がんがあることが分かり、熟慮の末、しばらく治療に専念することにいたしました。多くのみなさまに、多大なご迷惑をおかけすることは深く承知していますが、自分の身体あっての仕事ですから、このような苦渋の選択をえざるをませんでした。(略)必ずきちんと治して戻ってまいります。どうかしばらくの間、静かに見守っていただけたら幸甚です」
と公式サイト上でコメントするも、治療法については触れていなかった。
しかし、坂本さんのマネージャーが口を開いた。10日10時ごろ「スポニチ――なんて適当な記事...」とツイートし、記事内容に事実誤認があることを示唆した。すると坂本さん本人もこれに反応。マネージャーのツイートを引用した上で「読んでないけど。ああいう芸能記事を真に受ける人いるの?」とコメントした。
真偽についてエイベックス・ミュージック・クリエイティブに取材すると、担当者は「坂本さんが反原発を理由に(放射線治療を)拒否するといったことはないです」と話した。治療法を巡る報道はスポニチの「誤報」「飛ばし」ということらしい。
なお、坂本さんの所属事務所は「治療法については現在担当の医師と相談して進めていると聞いています。具体的な内容は聞き及んでおりません。また、今後も治療方法を公表する予定もございません」とコメントした。
一般的に咽頭がんは放射線治療のほかに、抗がん剤治療や手術が行われる。