震災で壊滅的な打撃を受けた大槌町の復興に、生業(なりわい)の再生が欠かせません。人口の流出に歯止めをかけ、町外に避難している被災者に帰郷してもらうためには、大槌町で働く場が必要なのです。住宅を再建するために盛り土をしたり、高台に移転場所を造成したりすることと並行して、企業立地が急がれています。
5月30日、大槌町役場で、大槌町と、大槌町に隣接する釜石市の小野食品株式会社との間で立地協定書が交わされました。小野食品は資本金5千万円、水産加工品を製造、販売する会社です。
調印式で小野昭男社長は「万感、胸に迫る思い。沿岸のため、大槌のために頑張りたい」と決意を述べ、大槌町の碇川(いかりがわ)豊町長は「不撓不屈(ふとうふくつ)の精神に敬意を表したい。優良企業を立地できてうれしい」とあいさつしました。二人の言葉の背景には、震災に関連した次のような出来事がありました。
小野食品は、製造、販売の拠点を釜石市から大槌町に広げようと、大槌工場を平成23(2011)年2月25日にオープンさせました。そしてその2週間後の震災による津波で、釜石工場とともに、完成したばかりの大槌工場を失ったのです。
今回、再建される大槌工場は、釜石市内に二つある工場に続く三つ目の工場になります。前の工場より規模が大きく、冷凍食品煮魚製造ライン、冷凍食品焼き魚製造ラインなど、水産加工品の製造ラインと冷凍冷蔵施設からなり、平成27年度に操業を開始する予定です。地元を中心に採用する従業員は、当初は26人で、将来は40人~50人を見込んでいます。
小野水産は、学校給食や外食産業の分野に通信販売を加えて売り上げを伸ばし、平成25年度の売上高は17億2千万円で、震災前の2割増を果たしています。大槌工場での年間売上高は操業開始時に5億5千万、5年後に10億円をめざしています。
震災後、大槌町への立地企業は、小野食品で5社目です。震災後初めて誘致されたのは釜石市の水産加工業の平庄。続いて昨年10月にカキ料理を提供する「オイスターバー」を全国展開する東京都中央区のヒューマンウェブ。今年3月には冷凍食品製造と外食事業を展開している奈良市のプロトンダイニング。4月には大槌町隣の山田町の水産加工業、石山水産の進出が決まりました。
5社ともに、大槌の水産業再生の一翼を担うことが期待されています。
(大槌町総合政策課・但木汎)
連載【岩手・大槌町から】
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