大分県臼杵市にある「ワタミファーム 臼杵農場」で農作業員を募集する求人情報が、インターネットで話題になっている。
経営するのは、外食や介護事業を展開する「ワタミ」の農業生産法人だが、注目されているのは「月給11万6600円~13万円」という給与。ワタミが経営する居酒屋などではアルバイトが集まらなくて時給が高騰しているが、農業事業はどうなのだろう。
「カニ獲りに行ったほうがマシ」って、言うほどでは…
大分県のハローワーク佐伯で、農作業員を募集しているのは「ワタミファーム 臼杵農場」。従業員12人(うち女性10人)が、7.5ヘクタールの耕地でサツマイモや里芋、ニンジン、レタス、大根などをつくっている。
募集は3人。仕事内容は、農場での農作業やパソコンを使っての日報の作成、トラクターによる草刈りや耕運作業、集荷に電話応対など。勤務時間は8時~17時(就業時間は季節によって変動がある)。週休(休日は年間104日)。応募資格は不問、とある。
肝心の、給与は月給11万6600円 ~ 13万円だ。
ハローワーク佐伯は、「農作業員の求人は、個人の農家がほとんどなのでそれほど高くないです」という。最低賃金が664円なので、およそ700円~800円が相場のようだ。
臼杵農場の場合は、1日8時間、ほぼ週休2日(月21日)として時給換算すると693~774円なので、最低賃金を上回る水準ではある。
それでも、インターネットでは、
「農奴が冗談になってないぞ」
「ベーリング海にカニ獲りに行ったほうがマシだわ」
「ボーナス無し。税金引かれ、年金引かれ…」
「都会でコンビニバイトしたほうがマシな気が…」
「住居・食事つきで冬に解雇されないんなら多分いける」
「ニートよりましかってな感じで応募するかも」
などなど、「安く働かせてこき使う」といった、居酒屋「ワタミ」のアルバイトのイメージからか、散々な云われようだ。
ちなみに、臼杵農場の求人は5月29日に募集が締め切られた。ハローワーク佐伯は、「(募集の)取り下げの連絡を受けただけで、採用が決まったかどうかはわかりません」と話している。
農業法人の参入で、「やりたい人が仕事に就きやすい環境に」
一般に、農作業のアルバイトは、野菜や果物の収穫の手伝いや、種や苗の植付け、雑草の除去などを行うのが主な仕事。数日の短期から数か月の長期まで、住み込みで働くケースが少なくない。作業は朝早くから夕方までと、「体力勝負」で「キツイ」イメージがある。
給与のほうも、インテリジェンスグループの求人情報サイト「an」によると、「日給としては平均6000~8000円ほどと決して高くはありませんが、基本的に1日3食の食事や宿泊スペースも支給されますので、食生活費や滞在費をほとんど負担する必要がありません」と説明。また、リクルートグループの「タウンワーク」をみると、農業法人などの求人が多い北海道の場合で時給850円前後と、やはり決して「高給」ではない。
とはいえ、「農家のおしごとナビ」を運営する「あぐり~ん」は、「農業法人の参入が増えてきたことで、農業をやりたい人が仕事に就きやすい環境になりつつあります」と話す。
たとえば、基本的に農業には労働時間の制限がない。それが異業種が運営する農業法人の参入が活発になったことで、「休みを増やすなど、働きやすさを重視する傾向にあります」と指摘する。
さらには、寮や社会保険を完備したり、月給制にして長期雇用を増やしたりもしている。
もっとも、自然や動稙物が相手なだけに、時間どおりにきっちり仕事が終わることのほうが難しいとも思える。月給制で時給換算したら、結果的に最低賃金並みだったなどということも起こり得るのかもしれない。