安倍首相、「移民受け入れ」方針じゃなかった テレビ番組で「ノー」、「負の部分」にも言及

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   慢性的な労働力不足を外国人労働者でカバーしたり、移民の受け入れで人口減少を食い止めようという議論が本格化するなか、安倍晋三首相がテレビ番組で米国型の移民政策について「それはとらない」と明確に否定した。反面、「いろんな生産現場で人手不足になることは間違いない」として滞在期限を区切る形での外国人労働者の受け入れには前向きだ。

   混乱を避けるためには、政府はこの二つの考え方の違いを明確に国民に説明する必要がありそうだ。

質問に対して○か×の札を上げて答える

安倍首相は米国型の移民政策は「とらない」と明言した
安倍首相は米国型の移民政策は「とらない」と明言した

   安倍首相が出演したのは、関西圏で2014年4月20日に放送されたバラエティー番組「たかじんのそこまで言って委員会」。4月18日に大阪市内の読売テレビ本社で収録された。自民党が野党だった時代にも出演するなど、安倍首相とは縁の深い番組だ。

   番組は、様々な質問に対して安倍首相が○か×の札を上げて答える、という形式で進行。その中で、安倍首相は

「日本の国力を維持するためには移民の受け入れも必要」

という問いに×の札を上げたのだ。

   政府では、経済財政諮問会議の下に設置した有識者会議「選択する未来委員会」が14年2月24日の会合で、移民の受け入れに関する試算を出している。それによると、出生率が現状の水準にとどまった場合は2110年に4000万人台まで減少する一方、出生率が2.07に回復した上で移民を年間20万人ずつ受け入れた場合は1億1000万人程度を維持できるという。

   このことから、政府が移民政策に前向きだと受け止める向きもあるが、安倍首相は、

「政府で20万人の移民計画とか、そういうことを考えているということはまったくない」

と否定。米国型の移民受け入れについても「それはとらない」と述べた。

移民を受け入れた国では「不幸な出来事がたくさん起こっている」

   ただ、

「人口が減少していく中において、いろんな生産現場で人手不足になることは間違いない」

とも述べ、外国人労働者の受け入れは必要だとの立場だ。新興国への技術移転を目的に国外から労働者を受け入れる「外国人技能実習制度」については、「抜本的に改革はしていきたい」述べた。「改革」とは、実習期間の延長や一度は本国に帰国した人の再入国要件緩和を念頭に置いているとみられるが、

「いわば移民政策ではなくて、3年とか5年とか期限を切って、技能を実習しながら、しかしそこで大切な仕事、役割をしていくということ」

とも述べた。移民受け入れのデメリットについても言及している。

「移民を受け入れてきた多くの国々が、様々な摩擦が起こって、入ってきた人々も、そこにいる人々も不幸な出来事がたくさん起こっている」

「移民政策と誤解されないように配慮しつつ」外国人労働者受け入れ拡大

   これらの事例の教訓を踏まえながら安倍首相は、

「移民政策ということではなくて、年限を限って、そこで収入を上げていただいて帰っていただく」

と述べ、期限付きの受け入れだということを強調した。

   ただ、安倍首相は4月4日に行われた経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議では、もっと踏み込んだ発言をしている。国外でトップセールスを行う重要性を述べた上で、

「優秀な人材の受け入れや留学生などの外国人材の積極的な活用に取り組む必要がある」
「特に、オリンピックに向けて、当面の建設人材不足を補うために、外国人建設技能者の活用が必要」

と述べている。一連の発言の中では安倍首相は「移民政策と誤解されないように配慮しつつ」とも述べており、安倍首相の中では外国人労働者の受け入れ拡大と移民政策の間には明確な線引きがあるようだ。ただ、こうした認識はまだまだ理解が広がっておらず、混乱を招く恐れがある。

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