韓国の旅客船事故で、行方不明者の家族らが沈没後に乗客から来たとしたメールは、警察の調べですべて偽物だと分かったと、韓国メディアが報じた。偽メールを流した目的については、ネット上で様々な憶測が出ている。
「船にはまだ人がいて、周りは真っ暗。泣いている人もいる。私はまだ生きている。生存者が4人いる。早く私たちを助けて!」。報道によると、ある家族は、沈没後の2014年4月16日深夜、娘から知人にこんな携帯電話のショートメールが届いたと訴えた。
いたずらか、救助急がせる目的か…
さらに、別の家族にも、メールなどが届いたとの情報が出回った。食堂横の客室に6人でいるので早く助けてくださいといった内容や、70人の生存者の名前が書かれたものもあったという。ラインに似た「カカオトーク」のメッセージもいくつか出回った、とも報じられている。
ところが、韓国の警察は17日、これらはすべて偽メールだとする調査結果を発表した。発信元が確認できなかったり、名前が乗船者名簿になかったりしたことから、行方不明者全員の携帯電話について、その利用記録を照会した。すると、沈没した16日正午以降に発信された記録が残っていなかったというのだ。
偽メールの意図について、日本のネット上では、いくつかの推測が出た。家族の関係者が救助活動を急がせようとして送ったのではないか、というのが1つの見方だ。また、本当は生存者がいるのに、偽メールと決めつけて救助の遅れを批判されないようにしているのでは、といった極端な憶測もあった。
報道によると、韓国警察のその後の調べで、発信元がいくつか分かった。生存者4人の偽情報を流したのは、ソウル市内の小学5年生だった。また、あるカカオトークのメッセージは、京畿道の男性がでっち上げたという。
ただ、その目的は、悪ふざけのいたずらなのか、早く救助してほしいという気持ちからなのかなど、はっきりしたことはまだ報じられていない。
鋼板と海水に囲まれ、通信は難しい
ネット上では、そもそも沈没した旅客船からは電波が届かないので、メールなどはできないのではないかといった声も多い。
沈没地点は、韓国の沿岸から約20キロも離れているが、ある通信事業者は、「一般的には数キロしか届かないものの、携帯電話の性能がよければ通信できるかもしれません」と話す。確かに、沈没前には、乗客の高校生らから電話やメールが相次いだと報じられた。事業者によると、旅客船内でWi-Fiサービスをしていれば、性能によらず通信可能だそうだ。
しかし、行方不明者は、生存していたとしても、船底のエアポケットにいることになる。その場合、鋼板と海水に囲まれており、通信はさらに難しくなると事業者は指摘する。
「鋼板も海水も電波が通ることもありますが、遮蔽物になりますので、電波が弱くなると思います。鋼板が厚ければ、電波はさらに弱くなり、飛ぶ距離も短くなってしまいます」
やはり、沈没船内で携帯電話を使うのは、かなり無理があるということのようだ。