「STAP細胞」論文で指摘されている捏造・改ざんについて、元毎日新聞主筆の菊池哲郎氏が福島民報で書いた、2014年4月16日配信の論説記事がインターネット上で波紋を広げている。
騒動を「オヤジ」たちの「未熟な若者つぶし」と言い切り、科学論文として不正かどうかは「内輪の話」と切り捨てているのだ。
「要はSTAP細胞ができるかどうかだけ」
「【小保方さんの騒ぎ】オヤジたちが情けない」と題した記事で、菊池氏は一連の騒動に「日本社会の重大な欠陥」をみると指摘する。既得権益に凝り固まった周囲の「オヤジ」たちが、論文の書き方のルールといった「既存社会の正しさ」を得意げに並べ立てているといい、その姿を「自己保身と未熟な若者つぶしに全力を挙げている」と批判した。
菊池氏は小保方氏が追及されている論文内の捏造や改ざんについても独自の見解を示し、「要はSTAP細胞ができるかどうかだけである。科学論文として不正かどうかなど、どうでもいい視野の狭い研究者の内輪での話だ」「学会内やその取り巻きの連中が何と言おうが、STAP細胞ができればそれで万々歳なのだ」と、まるで問題としていない。
さらにSTAP細胞を巡る問題は、研究者独特の内輪社会の課題が表ざたになった一例に過ぎず、「ある意味で科学の世界ではずっとあった、そんなことはあり得ない、できっこないという既成勢力の権威たちと、それに挑戦するとんでもない発想の主としての若者の戦いの図でもあろう」との見解を示す。本来、「オヤジ」たちの取るべき行動は、若者の成果を前向きに励まして協力し、それがうまくいかなければ、アドバイスをしながら再挑戦させることだと訴えた。
「情緒的論評が一番迷惑」「科学と情熱の履き違え」と批判多々
小保方氏の論文不正問題については、インターネット上でも菊池氏と同様の主張、つまり「STAP細胞は作製できれば問題ない」という見方がいくつも出ているが、多くの専門家は公正な科学的手続きこそが重要だと指摘している。
たとえばツイッターでは、サイエンスライターの片瀬久美子氏が「科学の土俵に立つならば、科学の手続きを踏むのは必須です。そうでなければ、当てずっぽうの霊言でも何でもOKになってしまいます」「もう一度最初から不正を排除して証明し直さないと、存在が認められることはないのです」と書いている。東大理学部教授のロバート・ゲラー氏は「『STAP細胞再現』云々というが、存在を裏付ける証拠がないのに、どうやって『再現』するのか?」と疑問を投げかけている。
そのため、菊池氏の記事は地方紙にもかかわらず17日16時時点で3000回以上ツイートされるなど大変な反響を呼んでいるが、寄せられているコメントの多くが批判的なものだ。
「こういう不正確な情報に基づく情緒的論評が一番迷惑」
「科学と情熱をはき違えている。正にオヤジが情けない」
「これはまずい。科学リテラシーが問われる福島の地元紙で、毎日新聞の元主筆がこんなことを書いては本当にまずい」
「論文の不正を『ただの内輪の既得権益だろ』と嗤うのは、検証と反証と批判に耐えて耐えて耐えて耐え抜いてこんにちを築き上げてきた科学への、あまりに無知で軽率て敬意を欠く態度」
また「若者を抑圧するオヤジ」という指摘についても、「理研が若い人の情熱とユニークな研究内容を尊重した結果がこの事件ですよ」「『若者』を対等な人間として見られない(格下の庇護すべきものと見ている)ところが病んでいますね」などと、反論が寄せられている。