STAP細胞論文の共著者で、理化学研究所の発生・再生科学総合研究センター(CDB)副センター長の笹井芳樹氏が2014年4月16日会見し、論文に対する疑惑について、「シニアな共著者として心痛の極み」などと陳謝するとともに、「生データやノートを見る機会がなかった」として、「改ざん」や「ねつ造」に気づくのは難しかった、とも語った。
論文に対する疑惑が発覚してから笹井氏が公の場に姿を見せるのは初めて。笹井氏は小保方晴子ユニットリーダーの論文執筆を指導する立場で、理研の調査委員会は、笹井氏について「研究不正行為を行ったわけではないが、その責任は重大」と結論づけていた。
「生データやノートを見る機会がなかった」
笹井氏の説明によると、小保方氏や山梨大・若山照彦教授が実験そのものや実験データの解析、図表の作成が終わった段階で笹井氏は論文プロジェクトに参加。小保方氏らが書いた文章の論理飛躍を指摘したり、論理構成を整理したりしたという。
執筆指導の段階で、「多くのデータは、すでに実験ごとに図表になっていた」こともあって、「生データやノートを見る機会がなかった」と釈明。
「文章全体を俯瞰する立場にあり、その責任は重大で申し訳ない」と陳謝したものの、調査委員会が認定した「改ざん」や「ねつ造」に事前に気づくことは難しかったとの見方を示した。
「くみ上げ細工の部品にヒビが入った。検証し直す必要がある」
論文の信頼性については、
「くみ上げ細工の部品のいくつかにヒビが入った。仮説として戻して検証し直す必要がある」
と話し、論文は撤回すべきだと主張。小保方氏が
「撤回するということは、そのオーサー(著者)が『この現象は間違いです』と世界に発表することになる」
などとして論文の撤回に反対していることについては、
「そういう考え方があることは理解できる。一般論としては、撤回ということは100を0にするのではなく、100をマイナス300にするという理屈」
だと一定の理解を示しながら、
「例えマイナス300になるにしても、より難しいレベルで検証する潔さが必要」
と反論した。
「非常に豊かな発想力があり、『これは』と思った時に集中力が高い」
小保方氏本人についても多くやりとりがあった。科学者としての資質については、
「非常に豊かな発想力」があり、「『これは』と思った時に集中力が高い」
と評価し、こういった面が理研への採用につながったと説明する半面、
「未熟という言葉は多用したくないが、非常に早い段階で科学者として身につけておくべき事が身についてないところが、発表後に多々明らかになった」
とも指摘。小保方氏の記者会見については、
「率直に心が痛んだ。やはり、ああいった場面に出ないといけないことになったそもそもの原因は、この論文に不備・過誤があったこと。それを見抜き、防止できなかったシニアな共著者、アドバイザーとしての非常に責任を強く感じる」
と改めて陳謝。また、小保方氏の会見での発言については、普段と比べても大きくはぶれていないとの見方を示し、
「彼女の発言自体は表情とか状況は非常に緊張していたが、言っていた内容は、普段私が聞いていた内容と差が無く、率直な思いを言っていたのだと思う」
と語った。