理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーが大阪で記者会見を開いた2014年4月9日夜、テレビ朝日系「報道ステーション」がこの会見とSTAP細胞を巡るニュースを伝えた。
その中で、小保方さんが実験記録や情報のストックに使用したという「パワーポイント」が何なのか分からなかった、というキャスターの古舘伊知郎さん(59)の発言が「マスコミ人とは思えない無知」などとネットで物議を醸している。
「わかる人にはわかるのかもしれませんが…」
「パワーポイント(PowerPoint)」はマイクロソフト社のプレゼンテーションソフトウェアで、文字情報や画像情報を編集・配置する機能を持っていて、例えばプレゼン資料やプレスリリースといった配布資料を作成したり、プロジェクターなどで投影するスライドショーが作成できたりする。
小保方さんは会見で記者から、理研から「捏造」と断定されたSTAP細胞の写真をなぜ科学誌「ネイチャー」に渡したのかと質問されると、画像を取り違えてしまい本当の写真は別にあると回答した。本当の写真を渡せばよかったのだが、パワーポイントの中にデータを集めていて、安心しきっていたためパワーポイント内の違う写真を渡してしまった、などと答えた。
古舘さんはこの会見のニュースを放送する前に、会見には非常に難しい専門用語が出てくるから事前に説明したほうがいいとして1枚のフリップを出した。そこには、
「ラボミーティングで使われたパワーポイントの写真が間違って論文に載ってしまった」
と書かれていて、古舘さんは「ここです」とパワーポイントの文字を指してこう語った。
「わかる人にはわかるのかもしれませんが、私にはわかりませんでした」
そして、パソコンなどで写真などを切り貼りしたりして、会議などでスクリーンに映す、ああいったものを作るソフト、などと、しどろもどろに説明した。
この放送直後からネットでは古舘さんはパワーポイントを知らなかった、などと騒ぎになり、「キャスターなのに無知すぎる」とか、「ニュースの司会をさせて大丈夫か?」などと大量に批判が出ることになった。しかし、暫くするとパワーポイントを知らなかったことぐらいで問題にするのはおかしい、といった古舘さん擁護の声も増えていく。
パソコン授業の教材で使っている小学校もある
パワーポイントを使うのは特定の職場だったり趣味だったりするし、アナウンサーが使うソフトだというものでもない。90年代後半から小中高でパソコンに関する授業が始まっていて、今では小学生にパワーポイントを使ったプレゼンをさせるところもあるが、古舘さんの年齢を考えれば知らなかったとしても何の不思議はないし、ましてや無知などというのは間違っている、などとして、
「俺もパワーポイントの名前は知っているが、何なのか説明できないわ」
「報ステ見ているような年齢層には、パワポの説明をするほうが親切だと思う」
「パワーポイントを知らないのが情弱なんじゃなくて、パワーポイントなんて知らない人が沢山いる事を知らないのが情弱なんじゃないか」
といった感想もネットに出ている。
ITジャーナリストの井上トシユキさんはこうした問題について、パワポは基本的にはビジネスユースであり、シンクタンクなどが頻繁に使用するものであるから、タレントやキャスターが知らなくてもしょうがないものだし、ジャーナリストやライターでもその存在は知っていても使わないことが多い、と見ていて、
「古舘さんが知らなかったとしても、仕方のないことだと思います」
ということだった。