「香港の研究チームがSTAP細胞の作成に成功した」――そんなニュースが2014年4月1日、理研が小保方晴子・ユニットリーダーの論文は故意による「改ざん」「捏造」だったとの最終調査報告したのと時を同じくして流れた。
ところが、この「STAP細胞に成功」の記事はやがて訂正されることになる。いったい何が起きたのか。
STAP細胞を生成するため3日かけて培養した
英Guardian紙やThe Scientist誌といった海外メディアが14年4月1日、香港中文大学のケネス・リー教授の研究グループがSTAP細胞の作成に成功した、などとウエブで流した。小保方リーダーの論文を参考にするとともにバカンティ教授に直接指示を仰ぎ、3日間細胞を培養した結果生成に成功することができた、培養は小保方リーダーが使った「酸処理」ではなく、もっと有効的な溶液があった、などと報じるメディアもあった。詳しいことは研究論文をまとめて学会誌で発表するのだという。そしてリー教授がウエブ上に公開した喜びのコメント、
「私は衝撃で言葉を失ってしまった。STAP細胞を生成するため3日かけて培養したその結果に驚いてしまったのだ。そして夢は続いていくのだ」
を掲載するメディアもあった。ただし、こうしたコメントに「STAP細胞の作成に成功」という表現は無い。リー教授に対し「4月1日はエイプリルフールだから冗談のつもりか?」と質問するメディアもあったが、リー教授は「違う」と答えたという。そして続報として出たのが、STAP細胞はどこにあるのかと尋ねたところ「これから更なる研究が必要だ」というものだった。4月2日からリー教授に関する一連の報道は訂正されることになった。
「時間の無駄です。STAP細胞は存在しないと思います」
日本でもSTAP細胞が生成されたというニュースは大きな衝撃となり、ネットでは「小保方は正しかったじゃないか」「小保方をバッシングした奴は謝罪しろ!」などとマスコミや理研への批判が相次ぐことになったが、実は、全くのデマだったということが分かってしまった。14年4月2日放送のTBS系「NEWS23」が香港に取材の電話を入れると、リー教授の研究チームスタッフだという女性が、
「小保方さんの実験方法ではSTAP細胞は再現できませんでした。他の人がやっても時間の無駄です。STAP細胞は存在しないと思います」
と答えた。いったい何がどうなっているのか。翌日3日放送のテレビ朝日系「モーニングバード」とフジテレビ系「とくダネ!」はリー教授に直接電話で話を聞いた。リー教授は、STAP細胞の生成に成功したとか存在しているとか言ったことはない、と完全否定し、
「実験結果を報告しただけで、それがSTAP細胞だと勘違いされてしまった。STAP細胞に関しては、実験を始めて3日後に細胞は死んでしまい失敗してしまいました。できた細胞はSTAP細胞の特質すらありませんでした」
と語っていた。つまりはメディアの勘違いから来た誤報ということだったらしい。
理研は小保方リーダーの論文を故意による「改ざん」「捏造」だったとの最終調査報告をし、STAP細胞の存在については更なる実験と調査が必要としているが、小保方リーダーは論文の取り下げを含め「捏造」呼ばわりされたことも不服だと弁護士を通じてコメントしている。