理化学研究所の小保方晴子・研究ユニットリーダーらが執筆した論文に写真の使い回しや盗用が疑われている問題で、新型万能細胞「STAP細胞」の存在そのものすら危うくなってきた。小保方氏が作成したとされるSTAP細胞の遺伝子を調べたところ、実験には使用しなかったはずのマウスの細胞だったことが2014年3月25日明らかになったからだ。
このマウスは別の万能細胞「胚性幹細胞」(ES細胞)作製によく使われており、小保方氏がES細胞をSTAP細胞と偽っている可能性すら出てきた。ネット上では小保方氏が好きなムーミンにちなんで「ムーミンポエム」と呼ばれる正体不明の書き込みが話題になっており、このマウスの問題も早い段階から指摘されていた。
「129」の毛色は白だが「B6」は黒
NHKなどによると、共同研究者の若山照彦山梨大学教授が凍結保存していたSTAP細胞2株を調べたところ、新たな疑惑が明らかになった。
若山氏は、論文執筆の参考にするため、「129系統」と呼ばれるマウスを渡して小保方氏にSTAP細胞の作製を依頼した。小保方氏はこのマウスの細胞を弱酸性溶液で刺激したところ、状態のよいSTAP細胞ができたとして若山氏に渡したという。
ところが、論文をめぐる疑惑を受け、小保方氏から受け取った細胞を改めて調べたところ、細胞は「B6」というマウスと、「F1」と呼ばれるB6と129の子どものマウスに由来したものだということが分かった。「B6」「F1」は、この実験では使用されていないマウスだ。
ただ、「129」「B6」「F1」のマウスは、ES細胞の作製には広く使われている。
さらに、「129」の毛色は白なのに対して、一般的に「B6」の毛色は黒だ。マウスの毛色は生まれてから数日後には判明するので、誤ってマウスの種類を取り違えたとは考えにくく、故意に差し替えた疑いがある。
今回問題になった細胞については「ネイチャー」の論文の中では直接触れられている訳ではないが、いまだにSTAP細胞作製の再現実験は成功しておらず、作製過程に根本的な疑問が浮上した形だ。
「つくりすぎてどれがどれかわかんないから、だれにもみせてあげない!」
実は2ちゃんねるの「生物板」では、かなり早い段階からこの問題を指摘する声が出ていた。まず、2月11日には
「B6/129交配して作ったハイブリッドの脾臓から酢風呂(編注:酸処理)でオホホー細胞(同:小保方氏の細胞=STAP細胞)にして先生に渡したのは間違いないです」
といった、マウスの種類に着目する声があった。また、2月13日には、
「もう数え切れんぐらいつくってるの! DBA2/B6ハイブリッドからもつくったし、129・B6からもね! つくりすぎてどれがどれかわかんないから、だれにもみせてあげない!」
といった、どのようなマウスからSTAP細胞を作ったか疑う声があがっていた。
これらの書き込みは正体不明の「怪文書」の類いだが、研究室のメンバーなど、理研内部の人しか知り得ない情報が細かく書かれているため、関係者の関与を疑う声も出ている。