三菱東京UFJ銀行、JTBグループ、明治グループ――。これらは文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の調査をもとに、東洋経済オンラインがまとめた2015年卒業の学生が就職したい企業の人気ランキングだ。
トップ10のうち、じつに5社が金融機関で、根強い支持を集めている。「堅実・安定」「高給」のイメージがあるからだ。実は30年前でもこの傾向は同じなのだ。
「業績不振」「仕事きつい」 電機大手、マスメディア人気の凋落
文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所の調べでは、三菱東京UFJ銀行は2013年、2014年に続く「3連覇」という。
2015年卒の就職人気ランキングのトップ10は、以下JTBグループ、明治グループ、全日本空輸(ANA)、東日本旅客鉄道(JR東日本)、みずほフィナンシャルグループ(FG)、野村證券、日本生命保険、大和証券グループ、丸紅と続く。
全体的な傾向としては、金融機関の人気が一段と回復。金融機関がトップ10のうち、5社を占めているのは14年卒と変わらないが、トップ20に広げると9社と、14年卒の6社から増えている。
2010年の経営破たんでランキングが急落した日本航空(JAL)も大きくランクアップ。ANAとともに、かつて花形だった航空業界の人気回復も目立った。
その半面、ソニーが14年の71位から127位に大きく転落。パナソニックも順位を落とした。女子学生に人気の資生堂も、35位から61位に順位を下げた。
ソニーは2003年に首位だった。それがついに100位圏外に去ったのは、業績面での停滞感が大きいとみられる。また、フジテレビジョンや電通といった10年ほど前にはトップ10の常連だった企業も、直近ではそれぞれ31位、32位と、完全に姿を消してしまった。
就活に詳しい大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は、「インターネットによって情報の伝播力が早く広くなり、とくにネガティブな情報は拡散しやすくなりました。IT企業も業績は悪くないのに、業界のイメージが『仕事がきつい』などのブラックなイメージがあるので、人気ランキングではなかなか上位に出てこないことがあります」と話している。
大手メディアには、「高給だが、その分仕事もきつい」というイメージがある。「いい会社、わるい会社」を特集した「週刊ダイヤモンド」(2014年3月8日号)の「待遇の満足度ランキング」によると、大手メディアでは朝日新聞社が5位にランキングされているだけだ。
総合商社は就職人気だけではなく、社員自身の満足度も高い
総合商社の人気も着実に復活している。トップ10に丸紅が入り、伊藤忠商事や三井物産、住友商事も前年よりもランクアップした。
ただ、総合商社や金融機関が上位、という点では30年前とほとんど変わらない。1984年の上位をみると、文系では東京海上火災保険(現・東京海上日動火災)や三菱商事、サントリーが、理系では日本電気や日立製作所、ソニーが、それぞれトップ3を形成。文系はトップ10のうち、総合商社と金融機関が7社を占め、理系は電機大手が上位7社までを独占していた(就職情報研究所調べ)。
前出の石渡嶺司氏は、「総合商社は昔も今も人気ですが、その理由の一つは、間口が広いことがあります。取り扱う商材が多種多様なので、いろいろな人材を求めています」という。もちろん、「経営の安定性」や「高給」の魅力は、昔も今も変わらない。
週刊ダイヤモンド(2014年3月8日号)の「待遇の満足度ランキング」によると、総合商社は「学生の就職人気だけではなく、社員自身の満足度も高い」としている。
親世代「自分の就活時にも総合商社と金融機関は人気だった」
一方、金融機関もメガバンクにみられるように合従連衡を繰り返したが、現在の経営状況は安定している。経営破たんの危機を、公的資金の資本注入で乗り切った。「大きければ潰せない」し、国に支援してもらえる。やはり、「寄らば大樹」ということかもしれない。
最近は、みずほFGのようにグループ全体で採用する金融機関もあるので、募集人数が多いことも人気の理由の一つだ。
石渡氏は、2015年卒と30年前の就職ランキングがあまり変わらないことについて、最近の就活事情が反映されているともいう。
「ここ数年、学生の就活に親が口を挟むのは当たり前になりました。親としては、『安定』『堅実』で『給料のよい』企業に入ってほしいものですが、総合商社や金融機関はその代名詞のような企業ですし、ちょうど自分たちが就活していたときも人気企業でした。そのイメージを引きずっているのだと思います」