愛知県刈谷市の小中学校全21校の生徒が、午後9時以降はスマートフォンや携帯電話を親に預け使用できないようにする、という取り組みを2014年4月から行うことになった。
未成年のスマートフォン使用に関しては、猥褻など悪質なサイトの閲覧問題だけでなく、ゲームの有料ガチャにハマりすぎて莫大な請求が来たり、援助交際などの温床になったりするなどと問題視されてきたが、今回の措置はそうしたことよりも、全世界で3億人以上が使っているコミュニケーション・アプリ「LINE」の「既読スルー」対策であることがわかった。
メッセージに返信しなければならないプレッシャー
刈谷市の教育委員会に話を聞いてみると、市内の小中学生のうち半数以上がスマホや携帯電話を所持しているという。学校に持ち込むことは原則禁止のため使用するのは家庭内か外出時になるが、狙いとしては「LINE」などを使ってトラブルが起きたり、生活習慣が乱れたりしないようにするための措置で、強制力はない。各家庭に「お願い」という形で伝え、午後9時以降の使い方を親子で考えてもらいたい、というものだと説明した。
この「LINE」だが、無料で通話や複数人数でのチャットができるもので、全世界で3億人、国内では5000万人以上が登録している日本生まれの大人気アプリだ。今や小学校高学年からの使用が増えていて、低年齢層のトラブルがいくつも報道されている。
その筆頭として挙げられているのがグループトークによるイジメで、何人かの仲間でメッセージのやり取り(チャット)をしている途中でいきなり一人を仲間外れにし、チャットに参加できないようにする。そして仲間はずれの人の悪口を書き連ねて盛り上がる。
仲間外れにされる原因の一つが「既読スルー」と呼ばれるもの。「LINE」の場合は送られて来たメッセージを開くと自動的に「既読」マークがつくため、そのメッセージに返信しないと「既読スルー」となり、返信が来なかった人の中には「バカにされたのではないか?」「返事を出さないのは失礼だ!」と感じる人もいてトラブルになる。そのため、「既読スルー」にならないかとプレッシャーを感じる人もいる。
「親にスマホを預けた」と友達に言い訳ができる
刈谷市にある小学校、中学校に話を聞いてみたところ一番の問題はこのLINEの「既読スルー」で、いつ誰かから来るかわからないメッセージを待ちスマホを気にしている。それが深夜になる場合もあり、来るとすぐに返信する。ある小学校の教頭は、
「既読スルーは全国的に問題になっていて、困っている子供も多く救ってあげなければいけません。今回の市の措置によって午後9時以降に来たメッセージは『親にスマホを預けているから返信できなかった』という説明ができますし、親としてもスマホを預かることで子供の生活習慣を守れますから私は賛成しています」
と話している。ある中学校では、取材に対し、
「これで保護者と子供がスマートフォンやLINEについて話し合い、使用上の約束などを話し合ういい機会になればいいと考えています」
と話している。