若者の間で深刻化している「インターネット依存症」を特集した2014年3月15日の「情報7days ニュースキャスター」(TBS系)が、ネット上でネタとして有名な「キーボードクラッシャー」のYouTube動画を紹介したために、ネット上で失笑を買っている。
動画はオンラインゲームに熱中する青年が興奮のあまりPCキーボードをぶち壊してしまうという衝撃的な内容で、ネット上では以前から「ネタ動画」として広く知られているものだ。ところが番組では、これを「ネット社会が生んだ新たな病」の象徴として大真面目に取り上げてしまったのだ。
本人種明かし「僕は気が狂っているわけじゃない」
「キーボードクラッシャー」の動画は2006年ごろ、ドイツに住む青年が「Slikk」のハンドルネームで投稿したものだ。汚い言葉を吐き、絶叫しながらオンラインゲームに没頭する姿を撮影したもので、頭に血がのぼるとキーボードを殴りつけ、最後にはキーボードを机に叩きつけ破壊してしまう。あまりの怒りぶりがネット上で話題になり、日本では「キーボードクラッシャー(KBC)」のあだ名が付けられた。
ところが、こうした怒り任せの破壊行為はすべて演技によるものだったことが後に発覚した。Slikkはその後のブログ(現在はキャッシュでのみ閲覧可)や動画で、あの動画はユーモアを込めた「ネタ」として制作したものだと打ち明け、「僕は病気ではなく、気が狂っているわけでもない。単に演技の才能があるだけ」などと釈明している。ちなみにSlikkはキーボード破壊シリーズのほかにも、愛犬と戯れたり、ラップを披露したりといった動画も投稿していた。
「何年前の話だよ」「情弱すぎ」
そんな懐かしのネタ投稿青年が、10年近く経ってから、日本の民放番組で勘違いされたままデビューしてしまった。15日放送の「情報7days」では、特集冒頭で和訳字幕付きのキーボードクラッシャーのYouTube動画を紹介し、
「青年はインターネットのゲームを楽しんでいる。するとボルテージがだんだん上がり、もう自身をコントロールできない。いわゆるインターネット依存症だと思われる」
とのナレーションを流した。画面左上のワイプには三雲孝江さんや齋藤孝さんら出演者の驚いた表情も映し出され、ネット依存の恐ろしさを伝えるのに効果的な役割を果たしていた。その後は女性に多いという「つながり依存」や、ネット依存が深刻化している韓国の状況、ネット依存に悩む子供のケアなどを解説していた。
キーボードクラッシャー動画が取り上げられた時間は1分に満たないほどだったが、インターネット上ではすぐに話題になった。YouTube動画や2ちゃんねるでは番組に対する皮肉や批判的なコメントが数多く書き込まれ、
「TBSがキーボードクラッシャーに釣られる」
「KBCって何年前の話だよww」
「なんという情弱」
「アホや、これ本人がやらせです、って告白してたじゃん」
「メディアはバカだということを再認識した」
といった厳しい見方が出ている。