新型万能細胞「STAP細胞」の論文に複数の不正が指摘されて以降、筆頭著者の小保方晴子・研究ユニットリーダー(30)は厳しい追及に晒されている。大学院時代の博士論文についてもコピー&ペースト(コピペ)疑惑が浮上し、研究者としての立場が揺らいでいる。
そうした中、東大出身の工学博士、武田邦彦氏(70)が2014年3月13日放送のテレビ番組の中で、画像が間違っていたのなら「眠たかったからと言えばいい」、海外論文の流用は「日本人が下手な訳で書くよりいい」などと独自の持論を展開し、インターネット上で賛否両論を呼んでいる。
写真転用は「目が霞んでいたんですよ」
武田氏は13日、CBC(中部日本放送)の情報番組「ゴゴスマ-GO GO!Smile!-」で、小保方氏の論文騒動を解説した。その中で、STAP細胞論文の画像転用問題について聞かれると、昔と今の研究者の生活環境の違いを説明し始めた。
武田氏によると、昔の研究者は裕福な家庭環境で育った人が多く、時間的、金銭的にも余裕があったが、今の研究者、特に女性は家事や子育てなどで余裕のない生活を送っている。そのため、「どうしても昔みたいにちゃんと(論文を)書けないんですよ」というのだ。石井亮次アナウンサーに「忙しいということ?」と聞かれると、「忙しいし、色々ある。審査官があれこれ言ってくる。『ここ変えて、次写真ここ入れ替えろ』って一生懸命やっているうちに、だいたい間違えるんです」と語った。
これに納得しない石井アナが「いやいや、論文に載せる写真ってめちゃくちゃ大事でしょう!」と反論すると、「目が霞んでいたんですよ」と驚きの回答。出演者陣はどっと笑ったが、あながち冗談ではないようで「目が霞んでいていいんです。そんなところを厳密にしたら日本の若い人が論文を出せなくなる。国際的にものすごく遅れる」と訴えた。欧米では新発見や学問的な進歩があれば論文が不十分でも評価される傾向にあるといい、そういった観点から武田氏は今回の画像転用をさほど問題視していないようだ。
「20ページはだれが書いても同じ文章になる」
さらに武田氏は、小保方氏が早稲田大学に提出した博士論文で20ページにわたる「コピペ」が指摘されている件についても「全然いいんですよ。第一そんなやつ持ち出すなと。人間は過去までほじくり返したら、色んなことがある」と全く意に介さない。「コピペ」とみられているのは、幹細胞の基礎知識を説明する部分であり、武田氏は「これ著作権がないんですよ。(科学の)事実は誰が書いても同じなんです。だから、彼女の20ページは世界中のだれが書いても同じ文章になる」とする。
科学者の目的は金や利権ではなく「自然現象を明らかにすること」である以上、こうした文章は「人類共通の財産」であるため、引用を示す必要もないというのが、その理由だ。むしろ「アメリカ人が書いたやつを持ってきたほうが、日本人が下手な訳で書くよりいいんです」と、コピペを歓迎する発言まであった。
再現実験については「長い目で見るべき」と話し、論文撤回についても「著者本人が判断すべきで、(周囲が)圧力をかけてはいけない」と主張する。最後に小保方氏が今やるべきことを問われると、「もし写真が間違っていたら、『眠たかったから』と言えばいいんです。小保方さんは、出てこないほうがいいと思いますよ。これだけ誤解がある以上、一般的には『なんだお前は!』ってなるから。『眠たい』なんて言ったってね」と笑いを誘った。
出演者陣は納得していたようだが…
最初は驚いてばかりいた出演者陣も最終的には概ね同意したようだった。だが、リアルタイムで放送を見た人や書き起こしを読んだ人たちからは賛否両論があがっている。
インターネット上では「新たな観点から問題を捉えることができた」「俺は同意出来る部分が多いけどな~」「論文には論文の常識があるってことなんだなたぶん」と理解を示す声がある一方、「明日にも職を追われていいレベルの失言を越えた失言じゃね…」「武田邦彦氏も眠たかったからこういう発言したんですよね?」「そんな無茶苦茶な論理で騙されるのは、アホなタレントだけ」「デタラメな奴がデタラメを擁護している」と厳しい意見もあがっている。
なお、理化学研究所は3月14日、一部画像が小保方氏の博士論文から流用されたものだと断定。また、小保方氏ら共同著者は同日、論文の取り下げを検討していることを明らかにした。