メディア各社に他の業種から中途入社する人は多いが、読売新聞の2014年3月13日朝刊紙面に掲載された社告は「専門記者を募集 医師・法曹」というものだった。専門性を生かして医療や司法に関する記事を充実させる狙いがある。
大手新聞社では医学部出身者や司法試験に合格した人が記者として活躍するケースがまれにあるが、有資格者をターゲットに記者の採用活動に踏み切るのは異例だ。
読売は大手紙で最も医療分野に力入れている
紙面やウェブサイトに掲載された募集要項では、「医療や司法分野の取材に専門的に取り組む記者を募集します」とうたっている。応募資格は「医師もしくは法曹の資格を持ち、実務経験のある方」。
読売新聞は医療専門サイト「ヨミドクター」を運営しているほか、紙面でも「医療ルネサンス」「一病息災」といった連載を展開するなど、大手新聞社の中では医療情報に最も力を入れている。これらの分野に加えて、司法関連の記事も強化する狙いがあるとみられる。
「専門」をうたうだけあって、待遇も単なる中途採用と比べて破格だ。一般的に新聞記者は本社や総局間の転勤を繰り返すが、募集要項にある勤務地は「東京本社」。研修は地方の支局で行うが、それが終われば転勤なしで東京・大手町の新社屋で勤務を続けられるようだ。定年は60歳だが、2月28日に募集を締め切った「経験記者・社会人採用」の募集要項にはなかった「定年後の再雇用制度あり」という記載が目を引く。
年収についても「30代半ばで約1000万円程度を見込んでいます」と明記した。大手新聞社の記者に限れば、年収は30~34歳で735万円、35~39歳で950万程度。40歳では1000万円を超えるとされている。多少優遇されているといえる。
スキルの面で「追いつく」ことができるか
では、弁護士や医師の年収と比べるとどうか。13年の賃金構造基本統計調査によると、30~34歳の男性医師の平均年収は861万7500円で、35~39歳だと1064万9800円まで上がる。男性弁護士の場合は30~34歳で1082万100円、35~39歳で868万3700円だ。この調査は10人以上の規模の事業所が対象なので、個人で開業しているとさらに多くの収入を得ているとみられる。それを踏まえても、この1000万円という金額は「相場」とは大きくは外れてはいないようだ。
ただ、大半の記者は新卒時から記者としてのトレーニングを積むのが一般的だ。記者教育は読売新聞社が改めて行うというが、30歳を過ぎた医師や弁護士が記者のスキルの面で「追いつく」ことができるかは未知数だ。