「ネットで評判」「ツイート炎上」など、日ごろツイッターの話題に触れる機会は多い。企業も商品・サービスの評判調査にツイッターを活用し始め、その重要性はますます高まっているが、意外と分析のノウハウはあまり知られていない。ソーシャルメディア分析ツールを提供している企業を訪れて話を聞いた。
大手芸能プロダクションにも導入
訪れたのはイマージュ(東京・中央区)。ソーシャルメディア分析ツール「MOON」を提供している企業だ。このツールは証券会社から大手芸能プロダクションまで、さまざまな業界に導入されているという。ブラウザで任意のキーワードを設定すると、ツイートを自動抽出して時系列で表示する機能を持ち、ツイート数の推移でテレビ番組の盛り上がった瞬間も把握できる。ツイートの分析方法を教えてくれた「MOON」担当者の桑野志朗さんは、「ドラマ『半沢直樹』最終回のオンエア中は、1時間で5万ツイートを超えてましたね」とにこやかに語った。
シンプルな操作性でキーワードを入れるだけで、簡単にツイートを収集・分析できるという。試しに「ソチオリンピック」で抽出した結果を見せてもらうことに。開会式のあった2014年2月8日(日本時間)から急激にツイート数が増加している。
グラフの赤色部分がネガティブなワードを含むツイートの割合を示しているが、圧倒的にその割合は少ない。「炎上」した場合はネガティブツイートが増えるので、グラフが真っ赤に染まるわけだ。登録したワードで急激にツイート数が増加するなど、炎上の危険があった場合は、即座にアラートメールを送る機能も実装されている。
基本的な操作説明を受けた後に、「ツイート数で商品同士の比較もできますか」と聞くと、「もちろん」との返答。ネットで争いが長年続くネタ「きのこの山」VS「たけのこの里」どちらが人気なのかという論争に白黒つけてもらうことにした。明治が販売するこの2種類のお菓子は「ライバル」同士と見立てられ、きのこ派は「たけのこは手が汚れる」と批判し、たけのこ派は「きのこはサクサク感が無い」と応酬する。幾度となく論争が繰り返されてきた勝負を制するのはどちらか――。
勝負はチョコレートの話題が飛び交うバレンタインデー2月14日のツイートを収集して行った。
ふたを開けると圧倒的なツイート数の差
分析結果を見ると、「きのこの山」ツイートは4139件、「たけのこの里」は1万4070件となり、たけのこが3倍以上の差をつけて勝利した 。「きのこの山」は14日前後であまりツイート数に変動はないが、「たけのこの里」は14日だけツイート数がいきなり伸びた。「たけのこ派」の記者には納得のいく結果だ。「きのこ派」の悔しがる顔が目に浮かぶ。ギョーザ日本一を競う宇都宮VS浜松の対決も実施すると、2月16日の24時間で「宇都宮ギョーザ」のツイートが1818件、浜松392件で、宇都宮の圧勝だった。
こうした柔らかいネタの分析にも使える「MOON」だが、実は現職国会議員の政策秘書も活用しているという。「自身の所属政党の名前などで、どんな意見がつぶやかれているかを調べたり、テレビ出演の翌日に実況ツイートを遡ったりしています」と桑野さん。政敵をキーワード登録して攻撃材料を探すのにも有効のようだ。
あるネット証券A社では、サイレントクレームを把握してサービスを向上させるのに役立てられている。企業にとって顧客の要求に応えるのは重要だが、直接寄せられる声はごく一部だ。何も言わずに商品から離れていってしまうことも少なくない。だが、A社はMOONを使用したことで、「手数料高いし他社に乗り換えようかな」「アプリの操作がわかりづらい」といった不満の声を収集して対応できた。「コールセンターには直接寄せられないような、ユーザーの批判的な本音や直情的な意見を逃しません」(桑野さん)
また、企業の広告やプロモーションに対する消費者の反応を現場のマーケティング担当者がリアルタイムにチェックできるほか、「公開前のCMがYouTubeに流出したり、未発表新製品情報が漏えいしていないか監視することができます」と田山修一社長は力説する。
そして大きな特徴は同種のサービスと比較してかなり割安な価格設定にある。現場担当者がネットの声を分析するのに十分な機能に絞り込んだことで実現した。ネットで話題になることは必ずツイッターを経由するという考えから他のソーシャルメディアを省き、業者に依頼しなくてもユーザーが設定を変えられるシンプルな作りになっている。
話を聞いているうちに急に自社の評判が気になった記者は、教わった手順で「J-CAST」と「MOON」に打ち込んでみた。わくわくしながら待っていると数分後、ツイートの分析結果が表示された。グラフはネガティブを示す赤色。見なかったことにしてそっとブラウザを閉じた。
【関連記事】
◆時代はビッグデータからスモールデータへ ツイッター解析ツールの決定版