福島県で発生している子どもの甲状腺がんを取り上げたテレビ朝日系の報道ステーションで、取材に応じていた福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センターが2014年3月12日、自身のホームページで改めて見解を公表した。
子どもの甲状腺がんは「100万人に1人か2人」とされているが、福島県では東日本大震災当時18歳以下の子ども約27万人のうち33人が甲状腺がんと診断され、摘出手術を受けた子どももいるという。
福島県立医大が情報を一括管理、「詳しい検査結果も知ることができない」
子どもの成長や発達を促す甲状腺ホルモンをつくりだす甲状腺は、原発事故による「放射性ヨウ素」を取り込みやすい。そのため、子どもほど放射線の影響を受けやすい。
福島県では東日本大震災から7か月後に、甲状腺検査を始めた。検査は2段階。1次検査では、異常がないとされるとA1判定。5ミリメートル以下のしこりや甲状腺に水分が溜まってできるのう胞が20ミリメートル以下の小さいものがあるとA2判定。それを超える大きなしこりやのう胞が見つかるとB判定、C判定とされ、2次検査が必要になる。がんの疑いもあるためさらに詳細な検査が行われる。
ところが、現地ではこうした検査や診断のあり方に疑問がもたれているというのだ。
報道ステーションでは、東日本大震災から3年目を迎えた2014年3月11日、「子どもが甲状腺がんに… 母が苦悩の告白」として報じた。
番組では、「『甲状腺がんのことを他にしゃべると就職にも差し障るかもしれないから黙っていたほうがいい』と医師に口止めされた人がいた」ことや「診断は県立医大のみ可能。個人病院で診断を受けようとしたが断られる」こと、「他の病院では県立医大と同じ検査方法を取らないといけない」こと、「受診者は流れ作業のようだった」こと、「2次検査まで半年も待たされた」こと、「県立医大が情報を一括管理していて、詳しい検査結果も知ることができない」ことなどを、甲状腺がんに罹った子どもを抱える母親の証言などをまじえて、まとめていた。
さらに、福島県立医科大や福島県民健康管理調査検討委員会などが当時18歳以下の県内の子どもに甲状腺がんが出たことについて、「原発事故との因果関係は考えにくい」との認識にあることに、疑義を示していた。
番組を見ていた視聴者からはツイッターで、
「医者から圧力をかけられるなんて。子どもが甲状腺ガンになっただけで、地獄のような思いなのに」
「詳しい検査情報を開示しなければ、どうすればいいのかわからないじゃん」
「福島では27万人で33人もの(甲状腺がんの)発生が確認されているが、原発事故との因果関係はないと云うのが国や県の公式見解となっている。これだけでも、有り得ない嘘だと判る筈なのだが…」
と、番組に同調する声が多く寄せられていた。
チェルノブイリで見られた「0~5歳の甲状腺がんは見つかっていない」
報道ステーションでは、甲状腺の第一人者で検査の責任者でもある、福島県立医科大学の鈴木眞一教授にも、きちんと話を聞いている。それによると「同じやり方で検査しなければ、異なる診断が出てしまい混乱を招く」ということのようだ。
とはいえ、県立医大にとって番組は、どうも「消化不良」であるらしい。番組中では言いたいことがうまく伝えられなかったと考えているようだ。
2014年3月12日にホームページに公開した「見解」によると、甲状腺検査の実施や判定の権限を県立医大に「集中させている」との番組の指摘について、県立医大は「県立医大が主体であるものの、実施の権限が県立医大に集中しているわけではない」と否定。検査は、福島県内の医療関係者が実施できるよう準備を進めていて、「14年度は県指定の県内医療機関でも検査ができる体制が順次整っていく見通し」という。
また、 甲状腺がんの発症と原発事故との因果関係については「番組内ではチェルノブイリとの比較において、被ばく線量についてほとんど触れられていなかった」と指摘。そのうえで、「チェルノブイリと比べて、福島における県民の被ばく線量が低いことがわかってきている」としている。
加えて、福島県で見つかっている甲状腺がんの患者の平均年齢が16.9歳(2013年12月末日現在)で、従来より知られている小児甲状腺がんの年齢分布に非常に似通っていること。チェルノブイリでは放射線の感受性が高い0~5歳(被ばく時年齢)の層に多くの甲状腺がんが見つかったのに対して、県内では現在のところ、その年齢層で甲状腺がんが見つかっていないことや、甲状腺がんの発見率に地域差がみられないことから、「現在見つかっている、甲状腺がんと診断された人については福島第一原発事故の影響によるものとは考えにくい」と説明した。