健康食品や医療品のインターネット通信販売の「ケンコーコム」は2014年4月1日付で、本社所在地を東京・港区から福岡市中央区天神に変更する。
同社は東日本大震災直後の11年5月から、原子力発電所の事故の影響による電力不足などのリスクに対して、安定的な事業運営体制の構築を理由に、本社機能の一部を福岡市に移していた。
東京への一極集中避ける
東証マザーズに上場する、医薬品などのネット通販大手のケンコーコムは2014年2月21日の取締役会で、本店所在地を福岡オフィスがある福岡・天神に移転することを決めた。
本社機能の一部を福岡へ移転し、東京と福岡の2拠点で業務を運営してきて約3年が経過したが、福岡での業務運営や人員確保などは順調に推移している。また、福岡市は同社がビジネスを展開しはじめたアジアへのゲートウェイであると同時に、日本国内の通販企業が集積している「通販大国」でもある。「福岡市は、物流や交通の利便性にすぐれており、Eコマースを成長させるためには、最適の土地」としている。
同社にとって福岡は西日本の物流拠点でもあり、また後藤玄利社長が大分県を地盤とする伝統薬メーカーの創業家の出身という、地の利もあったようだ。
ただ、取引先が首都圏に集中していることもあり、東京にも営業部門や法務、広報などの管理部門の一部を残している。その「東京オフィス」も、親会社の楽天とのより高い相乗効果を創出する狙いから、14年8月に現在の港区から品川区にオフィスを移転する。
ケンコーコムによると、「福岡が約100人、東京には約60人が勤務する体制になります」という。
そもそも、11年5月に福岡への一部移転を決めた背景には、東京への一極集中を避ける、「リスク分散」の狙いがある。東日本大震災後、東京は電力不足や余震、放射能汚染への懸念という3つのリスクを抱えることになった。
そうしたリスクに備え、東京脱出を図る企業があり、ケンコーコムはその一つだった。「当初は社長を含めてマーケティングや管理部門の一部など約20人が福岡オフィスに移りましたが、現在は100人体制になりました。『備え』ですから、すぐに成果が表れるようなものではありませんが、万一のときにもこの体制であればサービスが提供できると考えています」と話している。