「明治天皇の玄孫」竹田恒泰氏のツイートがきっかけで巻き起こった「五輪メダリストのメダルかじり」論争が、まだまだおさまる気配を見せていない。2014年2月14日には、複合の個人ノーマルヒル銀メダリストの渡部暁斗選手(25)が会見で「(成田収平監督から)メダル噛んじゃだめと言われました」と明かし、また賛否両論の声が上がっていた。
そんな「メダルかじり」論争に、元400mハードル選手の為末大さん(35)が参戦した。為末さんは「選手が噛みたいなら、メダルを噛んでもいいじゃないか」という立場のようだ。
竹田氏「メダルの所有権があるから何でもやっていいわけではないでしょう」
14年2月15日、為末さんは渡部選手が「メダルを噛むのを禁止された」というニュースを引用し、こんなツイートを投稿した。
「噛むふりをするのはメダルを顔に近づけてメダリストとメダルを同時に撮れる効率がいい方法として国際的に行われています」
これに対し、あるツイッターユーザーから「メダルの柄も見えないし、顔の横に持ってくるだけで十分では?噛むのは、やはり下品です」との意見が寄せられると、「気にならない人もいて、選手のメダルですし選手の思う通りにすればいいだけで、外から強制する事ではないと僕は思います」と返答した。
これに対し、「メダル噛み反対派」からリプライが殺到。「ダメです。犬じゃあるまいし『噛む』なんて教養のある人のする行為じゃない」「マスコミに言われたからと言って軽々しく噛む行為はメダルの価値・品格を蔑む行為に他ならないと思います」などと投稿された。
さらに竹田氏も、「メダルの所有権があるから何でもやっていいわけではないでしょう。世界の舞台に立つ日本人に立派に振る舞って欲しいと思うのは自然なこと」と為末さんに意見した。
「基本的には国ではなく選手を讃えるべきだという考え」
為末さんはこうした声を受け、2月17日に自身の考えをまとめてツイートした。
「選手がメダルを噛む行為に対し、私自身はほぼ抵抗がありませんが、思ったよりも抵抗を持っている人が多いのがわかりました。するかしないかは選手の自由だというのが私の考えですが、ただあの場合日本もですが、海外メディアからも要求される事があります」
「もう一つ海外で"誰かに命令されたから"を理由にするとあまり尊敬されない空気があります。裏では違うかもしれませんが表向きは、選手は自主的で自分の意見を持つべきとされているからかもしれません。ですのでもし日本が方向性を統一するとしても今回ではないタイミングで時間が必要だと思います」
「(前略)メダルが国家のものではなく選手のものであるというのがIOCの立場です。オリンピック自体がIOCによって管理されていますので基本はこれに従わざるをえません」
「ただ現状各国が強化費を入れて競技強化を行う以上、国家と個人のものであると考えられます。私はどちらかというと個人のものであるという側面が強いと思っています。当然節度はありますが、基本的には国ではなく選手を讃えるべきだという考えです」
なお、竹田氏とはFacebookのメッセージでやり取りをし、互いの考えを分かり合ったようだ。
「メダルを噛んでいる写真は売れる」という強迫観念がある?
為末さんはメダルを噛む選手を批判する人に対し、12年8月配信の米CNNの記事「Why Olympians bite their medals」を読むよう勧めている。
記事によると、International Society of Olympic Historians(ISOH)の会長、デヴィッド・ワルチンスキー氏は、選手がメダルを噛むのは「メダルを噛むポーズを欲しがるメディアを満足させるため」であって、「選手自ら噛もうと思ってやっているわけではないと思う」と語った。五輪に帯同するカメラマンには、「メダリストがメダルを噛んでいる写真は売れる」という「強迫観念」のようなものもあるという。
為末さんが言うように、海外のメディアにとっても「メダル噛み」は重要視されていて、専門家の間では、選手はあくまでもメディアのお願いに応えているだけ、というのが定説のようだ。