安倍晋三首相が2014年2月5日に行われた参院予算委員会で「『安倍政権打倒は朝日の社是である』と(聞いている)」と話す一幕があった。政治評論家の故三宅久之氏から聞いた話で、朝日新聞の幹部が発言したのだという。
皮肉まじりの異例の発言は委員会でも笑いを誘ったが、これに対し、朝日新聞社は、こうした社是および幹部の発言は「一切ありません」と否定している。
「私もそういう新聞なんだなと思って読む」
発言のきっかけは、脇雅史議員(自民)からの指摘だ。脇議員は安全保障戦略の基本理念である「積極的平和主義」が中国や韓国などの外国で「武力を使ってでも平和を達成する」と誤認されることに危機感を示した上で、朝日新聞が昨年12月に掲載した社説を取り上げた。積極的平和主義について「憲法9条による縛りを解き、日本の軍事的な役割を拡大していく考え方のこと」と断言しているとして問題視するなどし、首相に対して事実とあまりにも異なる場合は放置せずに、しっかり説明する必要があると訴えた。
これを受け、安倍首相は「新聞社が意見を明確に主張するのはいいことであり、どんどん批判していただきたい」と話した上で、冒頭の話を持ち出した。「かつて三宅久之さんから聞いた話ではありますが」と前置きし、「朝日新聞の幹部が『安倍政権打倒は朝日の社是である』と」と述べ、「これが社是であることは結構」と続け、「私もそういう新聞なんだなと思って読む」と挑発するようなコメントをし、笑いを誘った。
同じ社説の中で、脇議員が言及していた「『我が国と郷土を愛する心を養う』という一文が盛り込まれた。過剰な愛国心教育につながる危うさをはらむ」という一節に対しては、教育基本法に書かれていたことを持ってきただけに過ぎないとして、「我々は(ナショナリズムを)煽ることはしない。煽る人、煽る新聞社はあるかもしれないが」と皮肉を込めて否定した。「我々はしっかりとファクト、責任感で対応していきたいし、しっかりと真実を礼儀正しく静かに国民の皆様に分かりやすく伝えていきたいと考えている」と結ぶと、議員らから大きな拍手が起こった。