ネット選挙の解禁で、選対本部の中もある程度可視化されつつあるようだ。2014年2月9日投開票の東京都知事選では、複数の陣営から「解任」「追放」といった、物騒なツイートも発信されている。
今回の都知事選は、選挙期間中の候補者や政党によるネット利用が解禁された13年7月の参院選の次に行われる大規模な「ネット選挙」でもある。
上杉隆氏「『報道担当』解任、即『ネット戦略担当』に就任しました」
告示前日にあたる1月22日には、細川護煕候補の陣営で異変が起きた。
「細川護煕会見中。直前に『報道担当』を解任されたため事務所でニコニコを見る素敵な夕刻…」
「『報道担当』解任、即『ネット戦略担当』に就任しました」
このツイートをしたのは、「ジャーナリズム崩壊」 (幻冬舎新書)などの書著で知られる上杉隆氏。「報道」の肩書き入りの選対事務所の名刺とともにツイートした。上杉氏は1月19日には、かつて秘書として仕えた鳩山邦夫衆院議員の自宅写真とともに、
「仁義を切らせていただきました 15年ぶりの都知事選挙に参戦します メディア関係のみなさま、本当に申し訳ございません」
とツイートしたばかりで、わずか3日で「何か」が起こったことになる。
舛添氏支援の鳩山邦夫氏「良かった。良かった。これですっきりした」
鳩山邦夫氏は舛添要一氏を支援としており、1月27日にはフェイスブックで上杉氏に言及している。
「都知事選で、日頃、私と付き合いのなかった元秘書たち、たとえば前代議士の牧義夫君や元代議士の馬渡龍治君、それに上杉隆君らが細川陣営に加わって私は、ずい分誤解されてまいりました」
「ところが、『やはり』というか『良かった』というべきか、私の元秘書たちは全員、細川陣営からクビにされたというか、追い出されたようです。細川陣営は左翼志向の強いメンバーに占拠され、私の元秘書たちは居場所を失ったそうです。良かった。良かった。これですっきりしたという気持ちです」
鳩山氏が言及している馬渡氏については、細川陣営の事務局長を退任していたことが1月28日になって相次いで報じられている。ただし、上杉氏は「ネット戦略担当」を公言しており、1月28日、細川氏が有楽町の日本外国特派員協会で会見する写真を最前列から撮影してアップロード、鳩山氏が言うように「居場所を失った」かは必ずしも明らかではない。
「政策を真面目に議論している陣営が田母神陣営しかなかった」
不穏な動きは田母神俊雄氏の陣営でも起こっているようだ。「30歳キャリア官僚が最後にどうしても伝えたいこと」(ダイヤモンド社)で知られる元経産省キャリア官僚の宇佐美典也氏は1月22日、「(少なくとも自分の視点から見れば)『総合的に政策を真面目に議論している陣営が田母神陣営しかなかった』」という理由で「実は田母神陣営の中の人やってます」とブログでカミングアウトし、波紋を広げていた。
ところが、そのわずか6日後の1月28日には一転、
「色々ごたごたあって田母神選対事務所から出ることありました(原文ママ)。基本的には水島選対本部長との考え方の違いです。結局上杉隆化したこの2週間の我が身の迷走ぶりを反省し、しばし謹慎して頭を冷やします。また都知事選が終わった後にでもいろいろ総括します」
とブログで告白した。ツイッターでは、
「選対追放されました。頭冷やすべく、しばらく謹慎します」
と、さらにストレートな書き方になっている。
「政策重視」と「チャンネル桜」路線の溝が埋まらなかった??
この文面にある「水島選対本部長」は、「日本文化チャンネル桜」社長を長く務めた水島総氏のことを指す。水島氏は社長を辞任して選対本部長に就任したという経緯がある。 1月26日には、宇佐見氏は
「チャンネル桜の力はそれはそれで重要ですが、選挙に勝つには他の観点も必要というのが身近でみる印象です」
とツイートし、ツイッター利用者の
「普通に暮らしている都民の方々にメッセージを届けるのに、過激さは必要ないと考えます。過激であることと、力強いリーダーシップがあることは全く別のことです」
という声をリツイート(転送)していた。宇佐見氏は、ある程度はこの意見に賛同しているとみられる。
チャンネル桜のように保守路線を強調しようとした水島氏と、純粋に政策的な観点から有権者に訴えようとしていた宇佐見氏との「考え方の違い」が最後まで埋まらなかった可能性もありそうだ。