「七三分け」といえば、片方から7対3の割合で髪に分け目を付ける、オーソドックスなヘアスタイルの一種だが、「おじさんがする髪型」というイメージを持つ人は少なくないだろう。
ところが今、巷では若い男性を中心に「おしゃれ七三」なる髪型が流行っているらしい。ファッション誌やヘアカタログで取り上げられていて、実際美容室でもオーダーが殺到しているようだ。
「ノンスタイリング風ヘアに対するアンチテーゼ」
若い男性向けのヘアスタイル・ファッション誌「CHOKi CHOKi」2014年2月号で、「2013-2014ヘアトレンドを追う!!」という特集を組み、「おしゃれ7:3大旋風!」として七三分けを取り上げている。
「最近主流のノンスタイリング風ヘアに対するアンチテーゼとして、おしゃれ感度の高い人たちが取り入れてきた髪型」として、計8枚の写真で「おしゃれ七三」を紹介している。
七三分けだけでなく、1対9と割合の違う分け方や、リーゼントスタイルも「おしゃれ七三」に含まれるという。グリースやジェルなどを使ってきっちり固めている、前髪を上げるという特徴があるそうだ。
写真を見てみると、耳周りを短めに刈り上げ、頭頂部から耳の上くらいまでの髪を長めに残す、いわゆる「ツーブロック」を組み合わせているものが多い。あえて刈り上げ部分を見せ、長めに残した髪は全て逆サイドに流すというスタイルが人気を得ているようだ。
「メンズヘアカタログ'14」、「2014 流行る髪型オーダーBOOK」の2冊のヘアカタログを見ても、「おしゃれ七三」は「大人の男にマストな上品な雰囲気に直結する」「タイト&ウェットで大人のモードを楽しむ」といった文言で紹介されている。
人気の理由に「東日本大震災」が影響?
現在ブームになっている七三分けは、1960~70年代に流行した「アイビーカット」に似ている。米国のアイビー・リーグの大学生の間で人気だった髪型で、七三分けと前髪上げをスタイリング剤できっちりと仕上げるというものだった。アイビースタイルは日本でも洗練されたイメージとして受け止められ、ファッションブランド「VAN」とともにブームになった。
そんな七三分けが、今なぜ人気再燃しているのだろうか。都内の美容室の店長に話を聞くと、意外にも「東日本大震災」が影響しているという。
1923年に発生した関東大震災の後、現場で働く男性の間で、片側を刈り上げて長く残した髪を逆サイドになで付ける髪型が好まれた。これが「震災刈り」「復興刈り」という髪型のジャンルとして確立したのだが、東日本大震災の発生で改めて注目を浴びた。
また、以前はジャニーズに影響を受けたようなフェミニンな髪型が人気だったが、それに対抗してEXILEのように男臭さを前面に押し出すスタイルが見直され始めた。
「震災刈り」「EXILE人気」の2つがリンクし、現在の七三ブームにつながったとみている。実際、ここ1年ほどでオーダーはかなり増えたそうだ。
カラーリングやパーマをせず、黒髪・短髪でもかっこよくセットできるという点で、おかたい仕事をしている人もおしゃれな髪型を楽しめるというのも魅力の一つのようだ。