2015年にも市販の燃料電池車 燃料の水素にまつわる難問山積み

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   トヨタ自動車とホンダが2015年にも市販すると表明した燃料電池車(FCV)について、マスコミは電気自動車(EV)に比べて航続距離が500キロ以上と長く、水素の充填時間も3分程度と短いことから「究極のエコカー」ともてはやしている。

   水素と酸素を化学反応させ電気を作って走るFCVは、走行段階で出るのは水だけで、二酸化炭素(CO2)を排出しないというのが触れ込みだが、燃料の水素をどうやって大量生産し、安価に供給するかという問題は、まだ解決の見通しが立っていない。

市販FCVの価格は1000万円を切るレベル

実用化には課題が残る(画像は、トヨタ自動車の「FCV」サイト)
実用化には課題が残る(画像は、トヨタ自動車の「FCV」サイト)

   FCVの普及には水素ステーションが不可欠だが、ライバルのEVは急速充電器の設置を急いでおり、次世代エコカーの覇権争いは決着がつかないまま、当面は二重のインフラ整備が進むことになる。

   2013年12月1日に閉幕した東京モーターショーにはトヨタがFCVを参考出品した。トヨタは「2015年までに水素インフラが整備される見込みの大都市周辺で、セダンタイプの新型FCVを一般ユーザー向けに販売する」という。トヨタは「ガソリンに代わる燃料である水素は、環境にやさしく、さまざまな原料から作ることができるエネルギーだ」とアピールしている。

   トヨタ関係者によると、「市販FCVの価格は1000万円を切るレベル」という。しかし、肝心の燃料である水素については「何から作り出すか、価格がいくらになるのかなど、供給体制についてはまだ見通せない」と漏らす。

水素の生産段階ではCO2を発生する?

   水素を生産するには(1)ガソリン、ナフサ、メタノール、天然ガスなど炭化水素原料を改質する(2)製鉄所などで副産物として発生する水素を取り出す(3)水を電気分解する――などの方法がある。このうち(3)は、ホンダが太陽光発電で水を電気分解し、水素を取り出して走る開発を進めているが、エネルギー業界関係者は「高いコストをかけて発電した電気を水素製造に使うのは現実的でない」としつつ、将来的には「再生可能エネルギーで水を電気分解し、水素を利用するシステムを構築するのは不可能でない」とも指摘する。

   (2)は、鉄鋼、石油、ソーダ、エチレンなどの製造段階で発生する水素(副生水素)を利用するもので、製造技術は確立している。日本政策投資銀行によると、「鉄鋼、石油、化学業界などの副生水素だけで乗用車1440万台の年間利用分を賄うことができる」という。国内の乗用車は約6000万台なので、4分の1程度がFCVになっても供給できる計算になる。

   コストや安定供給の面から最も有望なのは、石油や天然ガスを分解して水素を取り出す(1)の方法だ。しかし、化石燃料を改質すると最終的には炭素(C)が残ることになり、その多くは再び酸素と結びついて二酸化炭素(CO2)として放出されることになる。走行段階でCO2を発生しなくても、水素の生産段階ではCO2を発生することになる。この点をマスコミの多くは指摘していない。

水素ステーション設置には約6億円かかる

   さらに水素ステーションで市販する水素の価格も不透明だ。現在、水素ステーションは首都圏を中心に全国に20カ所程度あるが、社会実験用の設備で、一般ユーザーに市販されていない。2015年にトヨタとホンダがFCVを市販した場合、水素の値段はいくらになるのか。自動車メーカー関係者は「ガソリンより高くては、FCVは普及しない。アベノミクスの成長戦略の一環として、ぜひとも政府の補助で無料にするなどしてほしい」と漏らす。

   政府はFCVが市販される2015年までに全国で約100カ所、FCVが200万台に達する2025年ごろには1000カ所の水素ステーションを整備する計画だ。2013年度は東京ガス、岩谷産業、JX日鉱日石エネルギーなどが首都圏のほか愛知県、兵庫県、福岡県の19カ所で水素ステーションを設置する。

   しかし、ガソリンスタンドの設置が数千万円で済むのに対して、水素ステーションは約6億円かかるとされる。計画通りに水素ステーションが整備されたとしても、全国に3万7000か所あるガソリンスタンドには遠く及ばない。

   一方、政府と自動車関連業界はEVの普及に向け、急速充電器の建設も進めており、これまでに約1900カ所整備した。EVとFCVの覇権争いは世界的に決着しておらず、当面はEV用の急速充電器とFCV用の水素スタンドの整備が並行して進むことになる。

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